- 2026年8月25日
リウマチ・膠原病患者さんはワクチンを受けても大丈夫?感染症リスクと安全性|御所南リウマチ膠原病どいクリニック(京都市中京区)
10月になると今年もインフルエンザワクチンの接種の時期が来ます。
リウマチや膠原病患者さんからもよく「自分はワクチンを受けたほうがいいの?」、あるいは「自分もワクチンを受けても大丈夫ですか?」などをよく聞かれます。
基本的にはワクチンは受けたほうがいいとお話しています。せっかくなのでワクチンに関する文献をご紹介します。
1本目はリウマチ・膠原病患者さんでワクチンで予防できる感染症が多いのかどうか。
2本目はリウマチ・膠原病がワクチンをきっかけに悪化することがあるのか。(インフルエンザワクチンの場合)
以下はAI要約を基本に追記・修正しています。
まずは1本目
Incidence and prevalence of vaccine preventable infections in adult patients with autoimmune inflammatory rheumatic diseases (AIIRD): a systematic literature review informing the 2019 update of the EULAR recommendations for vaccination in adult patients with AIIRD. RMD Open. 2019 Sep 19;5(2)
この研究では、自己免疫性炎症性リウマチ疾患の患者さんを対象とした63報の研究をまとめ、インフルエンザ、肺炎球菌感染症、帯状疱疹などの発症リスクを一般人口と比較しています。
インフルエンザはかかりやすい?
関節リウマチ患者さんでは、一般人口と比較してインフルエンザの発症率が高いことが報告されています。
ある大規模研究では、関節リウマチ患者さんのインフルエンザ発症リスクは一般人口の約1.2倍でした。
また、インフルエンザに伴う肺炎や脳卒中、心筋梗塞などの合併症も多く、インフルエンザ関連合併症の発症率は一般人口より高いことが報告されています。
肺炎球菌感染症のリスクも高い
肺炎球菌感染症についても、膠原病・リウマチ患者さんではリスクが高いことが示されています。
研究によって差はありますが、肺炎球菌性肺炎の発症率は一般人口と比較して、
- 関節リウマチ:約4倍
- 全身性エリテマトーデス(SLE):約4倍
と報告された研究もあります。
また、重症化しやすい侵襲性肺炎球菌感染症も増加しており、特にSLEでは若い患者さんでもリスクが高いことが報告されています。
帯状疱疹は約3倍
帯状疱疹も、膠原病・リウマチ患者さんでは特に注意が必要な感染症です。
このレビューでは約76万人の患者さんを解析した結果、帯状疱疹の発症リスクは一般人口と比べて約2.9倍でした。
病気別にみると、
- 関節リウマチ:約2.3倍
- SLE:約4.0倍
- 炎症性筋疾患:約5.1倍
と報告されています。
特にステロイドや免疫抑制薬を使用している患者さんでは、帯状疱疹のリスクがさらに高くなる可能性があります。
膠原病だからこそ感染症予防が大切
この研究では、膠原病・リウマチ患者さんでは、インフルエンザ、肺炎球菌感染症、帯状疱疹など、ワクチンで予防できる感染症のリスクが高いことが確認されました。
そのため著者らは、
膠原病・リウマチ患者さんではこれらの感染症予防が重要だと結論づけています。
もちろん、すべてのワクチンを誰でも同じように接種できるわけではありません。
特に免疫抑制治療中では、生ワクチンの使用に注意が必要であったり、使用している薬によってワクチンを接種するタイミングを調整した方がよい場合があります。
一方で、
「膠原病だからワクチンを避ける」のではなく、「膠原病だからこそ感染症を予防することが大切」
というのが現在の基本的な考え方です。
インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチンなどについては、病気の種類や治療内容に合わせて主治医と相談しながら接種を検討するとよいでしょう。
2本目。ワクチンは安全に接種できるのか?インフルエンザワクチンの場合。
Association between inactivated influenza vaccine and primary care consultations for autoimmune rheumatic disease flares: a self-controlled case series study using data from the Clinical Practice Research Datalink.
Ann Rheum Dis. 2019;78:1122-1126.
約1万5,000人のリウマチ・膠原病患者さんを調査
この研究では、イギリスの医療データベースを利用し、インフルエンザワクチンを接種した自己免疫性リウマチ疾患の患者さん14,928人を解析しました。
内訳は、
- 関節リウマチ:約80%
- 脊椎関節炎:約16%
- 全身性エリテマトーデス(SLE):約4%
でした。
ワクチン接種後90日間について、
- 関節リウマチの再燃
- 関節痛
- 新たなステロイド処方
- 血管炎
- 原因不明の発熱
が増えるかどうかを調べています。
ワクチン接種後にリウマチの再燃は増えなかった
結果として、インフルエンザワクチン接種後に、
関節リウマチの再燃が増えるという結果は認められませんでした。
接種後0~14日、15~30日、31~60日、61~90日のいずれの期間でも、明らかな再燃リスクの上昇は認められていません。
また、新たなステロイド処方についても、ワクチン接種後に増加するという結果はありませんでした。
血管炎や原因不明の発熱も増えなかった
ワクチン接種後に免疫反応が刺激されることで、
「血管炎などの自己免疫疾患を引き起こすのでは?」
という懸念もあります。
しかし今回の研究では、インフルエンザワクチン接種後に血管炎や原因不明の発熱が増えるという関連も認められませんでした。
リウマチ・膠原病だからワクチンを避ける必要はない
関節リウマチなどの自己免疫性リウマチ疾患では、一般の方よりインフルエンザやその合併症のリスクが高いことが知られています。
そのため、インフルエンザワクチンによる感染予防は重要です。
今回の約1万5,000人を対象とした研究では、
インフルエンザワクチン接種によって、リウマチの再燃やステロイド使用、血管炎などが増えるという結果は認められませんでした。
著者らも、この結果はリウマチ・膠原病患者さんにおけるインフルエンザワクチンの安全性を支持するものと結論づけています。
もちろん、使用している免疫抑制薬によっては、ワクチンを接種するタイミングを調整した方がよい場合があります。
しかし、
「リウマチ・膠原病だからワクチンを打たない方が安全」というわけではありません。
病気の状態や治療内容を確認しながら、適切にワクチン接種を検討することが大切です。
感想
リウマチ・膠原病患者さんでは、病気そのものの影響に加え、ステロイドや免疫抑制薬などの治療の影響によって、感染症のリスクが高くなることが知られています。
またこれらの感染をきっかけに病気自体が悪くなる場面も見られます。(Lupus Sci Med. 2024 Jul 1;11(2))
インフルエンザ・肺炎球菌・帯状疱疹などワクチンで予防ができる疾患はしっかり予防していくことが重要だと感じました。
また日々の外来でも、主治医としてしっかりワクチンのアナウンスを続けていきたいと思います。