• 2026年7月30日
  • 2026年8月5日

関節リウマチの治療費はいくら?生物学的製剤・JAK阻害薬の費用と治療の価値|御所南リウマチ膠原病どいクリニック(京都市中京区)

近年は生物製剤・JAK阻害薬といった優秀な薬がたくさん開発され、リウマチ診療は非常に質が高いものになってきています。

しかし患者さんからよく言われる「いい薬と言っても、値段が高くて使いたくない」という意見。

実際のところリウマチ診療、とくに生物製剤やJAK阻害薬はどれくらい費用がかかるのか。そしてそれに見合う効果はあるのでしょうか?

一本の論文だけではまとまらなかったため、今日は3本立てです。

やや長くなってしまったため先にポイントのまとめから。

この記事のポイント

・従来治療では自己負担は月7000円程度が目安

・生物製剤・JAK阻害薬を使用すると3割負担で月4万円前後になることもある

・一方で、病気をしっかりコントロールすることで仕事や日常生活への支障が減り、医療費以外の経済的損失を軽減できる可能性がある

Medical care costs of patients with rheumatoid arthritis during the prebiologics period in Japan: a large prospective observational cohort study. Mod Rheumatol. 2010 Feb;20(1):46-53.

Healthcare resource utilisation and economic burden of patients with adequate and inadequate responses to biological and targeted synthetic disease-modifying antirheumatic drugs for rheumatoid arthritis in Japan. Mod Rheumatol. 2024 Aug 20;34(5):910-917. 

Socioeconomic impact of treatment with biological disease-modifying antirheumatic drugs in Japanese patients with rheumatoid arthritis. Mod Rheumatol. 2023 Dec 22;34(1):27-36.

以下はAI要約を中心に、内容を追記修正しています。

まずは生物製剤がまだ十分普及していなかった時代の医療費に関して。

Medical care costs of patients with rheumatoid arthritis during the prebiologics period in Japan: a large prospective observational cohort study. Mod Rheumatol. 2010 Feb;20(1):46-53.

関節リウマチの治療費は月いくら?まずは生物学的製剤を使わない場合を解説

「関節リウマチと診断されたら、毎月どのくらい医療費がかかるのでしょうか?」

実際には病状や使用する薬によって費用は異なりますが、生物学的製剤を使用しない一般的な治療では、多くの方は毎月数千円から1万円台程度の自己負担(3割負担)が一つの目安になります。


日本で約6,800人を調査した研究

生物学的製剤がまだ一般的ではなかった時代、日本の約6,800人の関節リウマチ患者さんを対象に、年間の外来医療費が調査されました。

その結果、

年間外来医療費は約27万~29万円(保険診療全体の医療費)

でした。

健康保険の3割負担で考えると、患者さんの自己負担は年間約8~9万円程度、月約7000円となります。

※実際には高額療養費制度や公費助成、検査内容、処方薬などによって異なります。


病気の活動性が高い患者さんほど医療費は高い

また、炎症が強い患者さんや身体機能が低下している患者さんでは、医療費が約1.7倍高くなっていました。

つまり、関節リウマチでは、病気の活動性が高く、身体機能への影響が大きい患者さんほど、医療費も高くなる傾向が示されました。


「薬代を減らす」より「病気を悪化させない」ことが大切

医療費だけを見ると、 「薬を減らしたほうが安くなるのでは?」 と思われるかもしれません。 しかし、この研究から見えてきたのは逆でした。

炎症が続き、関節の障害が進んだ患者さんほど、

医療費は高くなる傾向がある。

つまり、病気をしっかりコントロールすることが、将来的な医療負担の増加を抑える可能性があります


まとめ

この研究から分かることは、

  • 生物学的製剤を使わない時代の年間医療費は約27~29万円だった。(自己負担額は3割で月7000円程度)
  • 病気の活動性が高く、身体機能への影響が大きい患者さんほど、医療費は高い傾向があった。

ということです。

次に生物製剤やJAK阻害薬を使っている患者の医療費に関して。

Healthcare resource utilisation and economic burden of patients with adequate and inadequate responses to biological and targeted synthetic disease-modifying antirheumatic drugs for rheumatoid arthritis in Japan. Mod Rheumatol. 2024 Aug 20;34(5):910-917. 

生物学的製剤やJAK阻害薬を使うとどれくらい医療費はかかる?


生物製剤またはJAK阻害薬を使用している患者の解析

この研究では、生物学的製剤またはJAK阻害薬を開始した2,446人を調査しました。

対象となった患者さんは、保険請求データを用いて、「治療変更がない」「ステロイドの増量がない」など複数の条件から、研究上の基準で「治療反応が良好な群」と「治療反応が不十分な群」に分けて解析されています。



リウマチに関係する年間医療費は約170万円だった。

リウマチ診療に関連した医療費だけを見ると、生物製剤またはJAK阻害薬が治療効果良好な患者さんも、治療効果不良な患者さんもいずれも年間約170万円(3割負担で51万円。月4万3千円程度)と大きな差はありませんでした。

治療反応が良好な患者さんでは薬剤費が約147万円、それ以外が約25万(合計172万円。3割負担で51万円。月4万3千円程度)

治療効果が不十分な患者さんでは薬剤費が140万円、それ以外が35万円(合計175万円。3割負担で52万円。月4万4千円程度)

両群とも同じ程度の薬剤費がかかっているにも関わらず、治療効果が十分でなかった患者さんでは治療効果良好な患者さんに比べて、

  • 入院期間は約1.8倍
  • 救急受診は約2.5倍

と予定外の医療機関の利用が多くなっていました。

たとえ高額な薬剤を使っていても、病気のコントロールが不十分な状態では、入院や救急受診など予定外の医療機関の利用が増えることが、この研究から分かります。


まとめ

この研究では、以下のことが分かりました。

  • 生物学的製剤やJAK阻害薬を使用している患者さんのリウマチ関連医療費は、年間約170万円(3割負担で年51万円。月4万3千円程度)でした。
  • 一方で高額な薬剤を使っていたとしても、治療効果が不十分な状態では入院や救急外来受診の機会が増える結果になっていた。

生物製剤やJAK阻害薬を使ってでも、しっかり病気をコントロールすることが重要。ここに関しては臨床現場では異論はほぼないところだと思います。

しかし時代や対象患者、研究方法が異なるため単純な比較はできませんが、医療費の面では3割負担とすると、生物製剤普及前は月約7000円、生物製剤及びJAK阻害薬使用患者さんでは月4万円強と、患者さんの負担が増えているのは間違いなさそうです。

次に生物製剤を使うことで、むしろ経済的損失を減らせる部分もある?

医療費以外にも実は損失はある。間接費用という考え方からです。

Socioeconomic impact of treatment with biological disease-modifying antirheumatic drugs in Japanese patients with rheumatoid arthritis. Mod Rheumatol. 2023 Dec 22;34(1):27-36.

生物学的製剤は高い?

日本人関節リウマチ患者を対象とした研究では、生物学的製剤を開始すると、薬剤費の増加により医療費は上昇しました。

一方でこの研究では病気によって仕事や日常生活に生じる経済的な損失(間接費用)にも注目しています。


「働けること」の価値もあります

この研究では、病気が改善することで

  • 仕事を休む日数
  • 仕事中のパフォーマンス低下

が改善しました。

その結果、

平均賃金を基に試算した仕事ができなかったことによる経済的損失は、有給で働いている方では月約1.1~5.0万円減少しました。

またリウマチによって十分に家事ができなくなった場合、その家事を外部サービスなどに代替すると月約8.2~10.6万円相当の費用になると試算されており、生物学的製剤による治療後には、この損失も改善していました。

これは「実際の給与が増えた」という意味ではなく、

平均賃金を基に、「病気によって失われていた仕事の時間や仕事の能率」を金額に換算すると、それだけ改善したと評価されたということです。


薬代だけを見ると高く感じますが…

経済的な負担は薬代だけではなく、治療によって取り戻せる仕事や日常生活まで含めて考える事が大切なのかもしれません。

もちろん、これは患者さん一人ひとりの収入を示した数字ではなく、論文のデータを基にした概算的な考え方です。

それでも、

「薬代だけを見て、生物学的製剤は高いと判断するのは早いかもしれない」

ということは、この研究から読み取ることができます。


大切なのは「薬の値段」ではなく「生活の価値」

生物学的製剤は確かに高価な薬です。

しかし、

  • 関節の痛みが改善する
  • 仕事を続けられる
  • 日常生活を送りやすくなる
  • 将来の関節破壊を防ぐ

こうした価値まで含めて考えることが大切です。

薬代だけでは見えないメリットがあることも、治療を選ぶうえで知っておいていただきたいポイントです。

 感想

生物製剤やJAK阻害薬は決して安い薬ではありません。

しかしリウマチ診療においては非常に重要な薬剤であり、メトトレキサートなど初期治療で効果が不十分な方にはぜひ使いたい薬剤です。

単純な医療費のみでなく、リウマチの状態が悪いことで失われるものもあること。そしてそれを取り戻せることは薬価以上の価値があるかもしれない。

そういったことを患者さんとも共有していければと思います。

また、最近では生物製剤やJAK阻害薬の薬価も下がってきており、一部では先行品より薬価の低いバイオシミラーが発売されているものもあります。

他にも高額療養費や付加給付制度など、様々な医療費助成の制度もあります。

患者さんがよりよい治療を受ける機会が少しでも増えてほしいと改めて思いました。

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