• 2026年8月11日

関節リウマチは動脈硬化になりやすい?心筋梗塞・脳梗塞との関係|御所南リウマチ膠原病どいクリニック(京都市中京区)

 関節リウマチの方で、意外とよく合併しているのが高血圧・脂質異常症・糖尿病などのいわゆる生活習慣病。

リウマチの治療に関しては熱心な方も、生活習慣病の薬を始めることを相談すると「それはもうちょっと待ってほしい。」と話される方も多く見られます。

でもせっかく関節リウマチのコントロールが良好でも、動脈硬化が進んで心筋梗塞・脳梗塞を起こすともったいないので、しっかり治療しましょうと説得する場面も。

せっかくなので今回は、関節リウマチと動脈硬化に関する文献をご紹介。

Accelerated atherosclerosis in rheumatoid arthritis: a systematic review. F1000Research. 2023;11:466.

以下はAI要約を基本に一部修正・追記しています。

関節リウマチでは動脈硬化が進みやすい

このレビューの大きな結論は、

関節リウマチ患者さんでは、一般の方と比べて早い段階から動脈硬化が進みやすい

ということです。

動脈硬化とは、血管の壁にコレステロールや炎症細胞などがたまり、血管が硬く、狭くなっていく状態です。

進行すると心筋梗塞や脳梗塞などの原因になります。

関節リウマチ患者さんでは、実際に心筋梗塞や脳梗塞を起こす前の段階である、無症候性の動脈硬化も多いことが報告されています。レビュー全体としても、RA患者では通常より早く動脈硬化が進む傾向があり、その背景には慢性炎症や通常の心血管危険因子が関与するとまとめられています。

たとえば、7,923人を対象としたメタ解析では、関節リウマチ患者さんは対照群と比べて、頸動脈内膜中膜複合体厚(cIMT)が厚く、頸動脈プラークも多いことが示されています。

cIMTは頸動脈エコーで測定する血管壁の厚さで、動脈硬化を評価する指標の一つです。

また別の研究では、両側の頸動脈にプラークを認めた割合が、関節リウマチ患者さんでは15.5%、対照群では6.6%と、2倍以上の差が認められました。

日本人の研究でも動脈硬化は少なくない

今回のレビューには、日本人を対象とした研究も含まれています。

関節リウマチ患者454人を調べた研究では、238人、約52%に動脈硬化所見が認められました。

また、年齢、高血圧、総コレステロール/HDLコレステロール比といった一般的な心血管リスク因子に加え、関節リウマチに伴う炎症も動脈硬化に関係すると考えられています。

ただし、これは「関節リウマチ患者さんの半分が将来心筋梗塞になる」という意味ではありません。

この研究でいう動脈硬化には、頸動脈エコーなどで見つかる症状のない段階の変化も含まれています。

なぜ関節の病気で動脈硬化が進むの?

一般的に、動脈硬化の危険因子としてよく知られているのは、

高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、加齢などです。

もちろん関節リウマチ患者さんでも、これらの危険因子は非常に重要です。

しかし、関節リウマチではそれだけではありません。

関節リウマチそのものによる慢性的な炎症が、血管にも影響する

と考えられています。

関節リウマチの病態に関係するTNF-α、IL-6、IL-1などの炎症性サイトカインは、関節の炎症だけではなく血管壁にも作用します。

TNF-αやIL-6は、酸化LDLの取り込みや泡沫細胞形成を促し、IL-1なども血管内皮の炎症反応や動脈硬化の形成に関与すると考えられています。

少し単純化すると、

関節リウマチによる慢性炎症
→ 血管内皮の機能が低下
→ コレステロールや炎症細胞が血管壁に集まりやすくなる
→ 動脈硬化が進む

という流れです。

つまり関節リウマチでは、

「加齢・喫煙・生活習慣病などによる動脈硬化」+「慢性炎症による動脈硬化」

の両方を考える必要があります。

リウマチの活動性が高いほど動脈硬化も進みやすい?

実際の研究でも、関節リウマチの炎症と動脈硬化の関連が報告されています。

複数の研究で、炎症性サイトカインや炎症の程度と、頸動脈の動脈硬化や血管内皮機能との関連が示されています。

また、疾患活動性が高い患者さんでは動脈硬化性プラークのリスクが高かったという報告もあります。

このため、関節リウマチでは血圧やコレステロールを管理するだけではなく、関節リウマチ自体の炎症をしっかり抑えることも重要と考えられています。

リウマチをしっかり治療すると血管にも良い?

それでは、関節リウマチの炎症を抑えると、動脈硬化も抑えられるのでしょうか。

今回のレビューでは、この点についてもいくつか興味深い研究が紹介されています。

Treat-to-target、つまり疾患活動性を目標までしっかりコントロールする治療を行った患者さんでは、cIMTの進行が少なかったという報告があります。

また、TNF阻害薬を使用した患者さんをまとめたメタ解析では、血管内皮機能の改善が報告されています。

別の研究でも、TNF阻害薬治療後に血管拡張反応を示すFMDや、血管の硬さを反映するPWVが改善しています。

これらの結果から、

関節リウマチの炎症をしっかり抑えることは、関節を守るだけでなく、血管にとっても良い可能性がある

と考えられます。

ただし注意も必要です。

今回紹介されている研究の多くは、cIMT、FMD、PWVなどの動脈硬化の代替指標を評価した研究です。

したがって、

「生物学的製剤を使えば心筋梗塞や脳梗塞が必ず減る」

と、このsystematic reviewだけから断定することはできません。

リウマチだけ治療すればよいわけではない

ここが、今回もっともお伝えしたいところです。

関節リウマチ患者さんでは、

① 関節リウマチの炎症をしっかりコントロールすること

と同時に、

② 高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙など、一般的な動脈硬化の危険因子をきちんと管理すること

の両方が重要です。

このレビューでも、関節リウマチ患者さんの早期動脈硬化には、慢性炎症と従来型の心血管危険因子の双方が関係するとまとめられています。

まとめ

関節リウマチは、単に関節だけに炎症が起こる病気ではありません。

慢性的な炎症は血管にも影響し、動脈硬化を促進する可能性があります。

そのため、関節の痛みや腫れが落ち着いていればそれで終わりではなく、

血圧、コレステロール、血糖、喫煙、体重などにも目を向けることが大切です。

そして同時に、関節リウマチの炎症そのものをしっかり抑えることも重要です。

関節リウマチの治療は、関節を守るだけでなく、全身を長く健康に保つことを目指す治療と考えると分かりやすいかもしれません。

感想

関節リウマチの患者さんでは、通常の加齢や生活習慣病による動脈硬化以外に、炎症に伴う動脈硬化もあることが指摘されています。

また、やむを得ず使用するステロイドなどの治療により高血圧・脂質異常症・糖尿病が悪化してしまうケースも散見されます。

実際、関節リウマチ患者さんでは心筋梗塞のリスクが2.1倍、脳卒中のリスクが1.9倍という報告もあります。(Arch Cardiovasc Dis. 2010;103:253-261.)

せっかく関節リウマチのコントロールが良好でも、動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまっては非常にもったいないと思います。

関節だけでなく、血圧・コレステロール・血糖などにも目を向け、動脈硬化もしっかりケアして健康寿命を延ばしていきましょう。

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