• 2026年9月15日
  • 2026年10月6日

関節リウマチのステロイド治療|効果と副作用、なぜ減らす必要がある?|御所南リウマチ膠原病どいクリニック(京都市中京区)

 関節リウマチや膠原病診療ではステロイドはまだまだ重要な薬です。速やかによく効くため、患者さんに喜ばれる場面も多くみられます。

一方で様々な副作用があるため、関節リウマチでは「はじめの間だけ、期間限定で使います。かならず将来的にはやめていきましょう。」、膠原病診療でも「なるべく最低限の量まで減らしていきましょう。」と開始時にしっかりお話するようにしています。

今回は、ステロイドが実際どの程度怖い薬なのかという文献を紹介させていただきます。

 Efficacy, duration of use and safety of glucocorticoids: a systematic literature review informing the 2022 update of the EULAR recommendations for the management of rheumatoid arthritis. Ann Rheum Dis. 2023 Jan;82(1):81-94. 

以下はAI要約を中心に、一部追記・修正しています。

ステロイドは怖い薬?

関節リウマチで大切な「上手な使い方」

ステロイド(副腎皮質ステロイド)は、関節リウマチの炎症を速やかに抑える、非常に効果の高い薬です。

一方で、感染症や骨粗鬆症、糖尿病など、さまざまな副作用があることも知られています。

そのため現在の関節リウマチ治療では、「ステロイドを使わない」ことよりも、「必要なときには適切に使用し、できるだけ少ない量・短い期間にする」ことが大切と考えられています。

2023年に Annals of the Rheumatic Diseases に発表されたシステマティックレビューでは、関節リウマチに対するステロイドの「効果」「使用期間」「安全性」がまとめられています。この研究は、EULAR(欧州リウマチ学会)の関節リウマチ治療推奨を作成する際の根拠となったものです。


ステロイドは、関節リウマチによく効きます

ステロイドには炎症を速やかに抑える作用があります。

特に関節リウマチの治療を開始したばかりの時期には、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬(DMARD)が十分に効いてくるまでの**「橋渡し治療(bridging therapy)」**として使用されることがあります。

実際、65歳以上の関節リウマチ患者さんを対象としたGLORIA試験では、通常治療にプレドニゾロン5mg/日を追加することで、プラセボと比較して関節リウマチの活動性が改善しました。

評価項目プレドニゾロン5mgプラセボ
3か月のDAS28変化−1.4−0.7
ACR20達成36%24%
ACR50達成20%9%
ACR70達成8%1%
2年間の関節破壊進行(SvdH)0.31.9

ステロイドは単純に「悪い薬」ではありません。必要な場面では非常に有効な薬です。


では、なぜステロイドを減らすのでしょうか?

理由は、ステロイドには投与量や使用期間に応じて副作用が増える可能性があるためです。

今回のシステマティックレビューでは、ステロイド使用に伴って、

重篤な感染症、骨粗鬆症性骨折、糖尿病、心血管イベント、死亡

などのリスク上昇が報告されています。

研究によって結果にばらつきはありますが、全体としては使用量が多くなるほど、また使用期間が長くなるほど副作用リスクが高くなる傾向が認められています。


感染症は、ステロイドの量が増えるほど多くなる

副作用の中でも、比較的分かりやすいデータが感染症です。

米国の大規模データベースを用いた研究では、関節リウマチ患者さんが1年間に入院を必要とする感染症を起こした割合は次のようになっていました。

1日のステロイド量(プレドニゾロン換算)MedicareOptum
使用なし8.6%4.0%
5mg以下11.0%5.2%
5~10mg14.4%8.1%
10mg以上17.7%10.6%

どちらの集団でも、ステロイドの量が増えるにつれて感染症が増える傾向がみられました。

一方で、このデータから「5mg以下なら危険」「ステロイドは使わないほうがよい」と単純に考えることはできません。関節リウマチそのものの活動性など、感染症リスクに影響するさまざまな要因があるためです。


骨粗鬆症・骨折にも注意が必要です

ステロイドの長期使用で特に注意したい副作用の一つが骨粗鬆症です。

ある研究では、骨粗鬆症性骨折のリスクはステロイドを使用していない患者さんと比べて、ステロイドの1日量が多いほど骨折リスクが高くなる傾向がみられました。

1日量骨折リスク(HR)
7.5mg/日以下1.14
7.5~14.9mg/日1.38
15mg/日以上1.84

また、別の研究では3か月以上のステロイド使用で骨折リスクの上昇が報告されています。一方で、低用量では明確なリスク上昇を認めなかった研究もあり、結果は完全には一致していません。

そのため、ステロイドを長期間使用する患者さんでは、必要に応じて骨密度測定を行い、骨粗鬆症の予防や治療を検討することが重要です。


糖尿病も重要な副作用です

ステロイドによって血糖値が上昇し、糖尿病を発症することがあります。

今回のレビューでは4つの観察研究が検討され、多くの研究でステロイド使用に伴う糖尿病発症リスクの上昇が報告されました。また、1日の投与量や累積投与量が多いほどリスクが高くなる傾向も認められています。

ただし、5mg/日未満では糖尿病リスクの上昇を認めなかった研究もあれば、認めた研究もあります。

これはステロイドの副作用を考えるうえで重要なポイントです。

「〇mg以下なら絶対に安全」という明確な境界は、現在の研究では決められていません。


心血管疾患や死亡リスクについては慎重な解釈が必要です

心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントについても、ステロイド量が多いほどリスクが高くなるとする研究があります。

一方で、関節リウマチでは病気そのものの炎症も心血管疾患のリスクを高めます。そのため、「ステロイドを使ったから心血管イベントが増えた」のか、「病気が重い患者さんほどステロイドを使うためリスクが高く見えた」のかを完全に分けることは難しいという問題があります。

実際、このレビューでも心血管イベントに関する研究結果は一致しておらず、疾患活動性などによる交絡の影響が指摘されています。

死亡についても、低用量では明確なリスク上昇を認めない研究がある一方、より高用量ではリスク上昇が報告されています。ある研究では、プレドニゾロン換算8~15mg/日でHR 1.78、15mg/日以上でHR 2.83でした。


多くの患者さんではステロイドを中止できます

では、一度ステロイドを開始すると、ずっと飲み続けなければならないのでしょうか。

臨床試験をまとめた解析では、初期治療としてステロイドを開始した患者さんのうち、ステロイドを継続していた割合は、

12か月後で22%、24か月後で10%

でした。

つまり、臨床試験では多くの患者さんが最終的にステロイドを中止できています。

ただし、この数字は「1~2年間ステロイドを飲んでもよい」という意味ではありません。

現在の関節リウマチ治療では、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬で病気そのものをしっかりコントロールしながら、ステロイドは臨床的に可能な範囲で減量・中止していくことが基本となります。


急いで中止すればよいわけでもありません

一方で、ステロイドを長期間使用している患者さんでは、減量によって関節リウマチが再燃することがあります。

SEMIRA試験では、トシリズマブ治療中で病気が安定していた患者さんを、プレドニゾン5mg/日を継続する群と減量・中止する群に分けて比較しました。

24週間再燃せずに経過する可能性は、ステロイドを継続した群で高く、HR 2.77でした。

したがって、ステロイドは「副作用があるから、とにかく早くゼロにする」のではなく、関節リウマチを十分にコントロールしながら、患者さんごとに適切な速度で減量することが重要です。


まとめ

ステロイドは、関節リウマチの炎症を速やかに抑える非常に有効な薬です。

しかし、長期間の使用や高用量の使用では、感染症、骨粗鬆症、糖尿病などの副作用が問題になります。

そのため現在の治療では、必要なときには適切に使用し、抗リウマチ薬で病気をしっかりコントロールしながら、できるだけ少ない量・短い期間にすることが大切です。

一方で、すでに長期間ステロイドを内服している患者さんが自己判断で急に中止すると、病気の再燃や副腎機能低下を起こす可能性があります。

**ステロイドは「怖いから使わない薬」ではなく、「効果と副作用の両方を理解して上手に使う薬」**と考えるのがよいでしょう。

 感想

今回の報告でも、やはりステロイドは有害事象が多く、漫然と長期間使用するべき薬ではないということが改めて示されています。

一方で、治療早期に症状を速やかに改善させたり、2年後の関節破壊を抑えたりするなど、ステロイドには明らかに有用な面もあります。
そのため、ステロイドは単純に「良い薬」「悪い薬」と考えるのではなく、いつ、どの程度の量を、どのくらいの期間使うのかが重要な薬なのだと思います。

実際の診療では、ステロイドを減らしにくくなる理由のひとつとして、患者さんが減量に強い不安を感じることがあります。

「ステロイドを飲んで、こんなに痛みがよくなった。減らしたり、やめたりして、また以前のように痛くなるのが怖い」

という気持ちは、患者さんにとってとても自然なものだと思います。

だからこそ、ステロイドを開始する前から、なぜこの薬を使うのか、どのような効果が期待できるのか、どのような副作用があるのか、そして今後どのように減らしていくのかを、患者さんとしっかり共有しておくことが大切です。

治療中も病気の状態や薬の効果、副作用について繰り返し話し合い、患者さん自身にも十分に理解してもらったうえで、治療方針を一緒に決めていくことが重要だと改めて感じました。

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