• 2026年10月13日

関節リウマチと骨粗鬆症|ステロイドを使っていなくても骨折リスクは高い?|御所南リウマチ膠原病どいクリニック(京都市中京区)

関節リウマチで意外と知られていない合併症に骨粗鬆症があります。

外来でも定期的な骨密度測定などをおすすめしていますが、患者さんからすると「関節リウマチと骨密度が関係するんですか?」と疑問に思われる場面も多いように感じます。

せっかくですので今回は関節リウマチと骨粗鬆症に関する文献を紹介します。

Rheumatoid arthritis and subsequent fracture risk: an individual person meta-analysis to update FRAX.Osteoporosis International. 2025;36:653–671.

以下はAI要約を一部修正・追記しています。

関節リウマチと骨折リスクを調べた約171万人の大規模研究

この研究は、関節リウマチと将来の骨折リスクの関係を明らかにするため、世界各国の前向きコホート研究を統合したものです。

研究の特徴は、過去の研究結果を単純にまとめたものではなく、**個々の参加者のデータを用いたメタ解析(individual participant data meta-analysis)**である点です。

主な解析には29の前向きコホートが使用され、対象者は1,714,328人でした。

  • 対象者数:1,714,328人
  • 前向きコホート:29研究
  • 平均追跡期間:9.1年
  • 総追跡期間:約1,568万人年
  • 関節リウマチと報告された方:21,694人(約1.3%)
  • 追跡期間中の臨床的骨折:139,002人
  • 大腿骨近位部骨折:27,518人

非常に大規模なデータをもとに、関節リウマチが骨折リスクにどの程度関係しているかを検討しています。

関節リウマチ患者さんの骨折リスクは約1.5倍

研究の結果、関節リウマチ患者さんでは、そうでない方と比較して骨折リスクが有意に高いことがわかりました。

具体的な結果は以下のとおりです。

骨折の種類ハザード比(HR)95%信頼区間
すべての臨床的骨折1.491.35–1.65
骨粗鬆症性骨折1.521.35–1.71
主要骨粗鬆症性骨折1.491.32–1.67
大腿骨近位部骨折1.931.53–2.44

※年齢・追跡期間で調整した男女合計の結果(原著論文Table 2)。

主要骨粗鬆症性骨折には、大腿骨近位部、臨床的な椎体、前腕遠位部、上腕骨近位部の骨折が含まれます。

つまり、関節リウマチの患者さんでは全体の骨折リスクが約1.5倍、大腿骨近位部骨折のリスクは約1.9倍という結果でした。

これらはハザード比であり、個々の患者さんの骨折する確率が一律に1.5倍になるという意味ではありません。

特に大腿骨近位部骨折は、高齢者の生活の質や歩行能力、生命予後にも影響する可能性があるため、予防が重要です。

骨折リスクは男性でも女性でも高い

一般的に骨粗鬆症は閉経後の女性に多い病気ですが、今回の研究では男性の関節リウマチ患者さんでも骨折リスクの上昇が認められました。

男女別にみると、すべての臨床的骨折について、

  • 女性:HR 1.51(95%CI 1.37–1.67)
  • 男性:HR 1.55(95%CI 1.22–1.96)

という結果でした。

さらに、大腿骨近位部骨折では、

  • 女性:HR 2.02(95%CI 1.57–2.58)
  • 男性:HR 1.70(95%CI 1.10–2.63)

でした。

男女で骨折リスクの上昇幅に統計学的に明らかな差は認められませんでした。

つまり、骨粗鬆症や骨折に対する注意は、女性の関節リウマチ患者さんだけでなく、男性の患者さんにも必要ということです。

ステロイドを使用していなくても骨折リスクは高い?

今回の研究で、特に興味深い結果の一つがステロイドとの関係です。

関節リウマチでは、炎症を抑えるためにプレドニゾロンなどのステロイド薬を使用することがあります。

ステロイドは骨粗鬆症を引き起こす重要な危険因子の一つですが、関節リウマチの骨折リスクはステロイドの使用だけで説明できるのでしょうか。

研究では、ステロイド使用状況を調整した解析も行われています。

骨折の種類ステロイド未調整HRステロイド調整後HR
全臨床的骨折1.491.39
主要骨粗鬆症性骨折1.491.39
大腿骨近位部骨折1.931.74

※原著論文Table 4。調整後の大腿骨近位部骨折HRは1.736。

全臨床的骨折では、ステロイド使用状況を調整してもHR 1.39(95%CI 1.25–1.55)と有意な関連が残っていました。

大腿骨近位部骨折でも、調整後のHRは1.74(95%CI 1.36–2.21)でした。

この結果は、関節リウマチに関連する骨折リスクの上昇が、ステロイド使用のみでは説明できないことを示しています。

ただし、この研究はステロイドを使用したことがない患者さんだけを調べた研究ではありません。ステロイドの累積投与量などの影響を完全に除外できるわけではない点には注意が必要です。

骨密度だけでは説明できない骨折リスク

もう一つ興味深いのが、骨密度との関係です。

骨粗鬆症の診療では、骨密度検査が重要な役割を果たします。

しかし、骨折のしやすさは骨密度だけで決まるわけではありません。

今回の研究では、大腿骨頸部骨密度(BMD)を測定した患者さんについて、骨密度で調整した解析も行われました。

骨折の種類骨密度未調整HR骨密度調整後HR
全臨床的骨折1.381.42
主要骨粗鬆症性骨折1.361.41
大腿骨近位部骨折1.461.58

※骨密度測定データを有する集団での解析(原著論文Appendix Table 7)。全体解析とは対象集団が異なります。

骨密度を考慮した後も、関節リウマチと骨折リスクの関連は維持されました。

このことは、関節リウマチ患者さんの骨折リスクを評価する際に、骨密度だけでなく、関節リウマチという病気そのものや、転倒につながる身体機能などの要因も考える必要があることを示唆しています。

なお、この結果は「骨密度が正常な人でも必ず骨折しやすい」と直接証明したものではありません。

若い関節リウマチ患者さんでも注意が必要?

今回の研究では、年齢と骨折リスクの関係についても解析されています。

特に大腿骨近位部骨折では、若い年齢層ほど関節リウマチに伴う相対的なリスク上昇が大きい傾向が認められました。

年齢大腿骨近位部骨折HR95%信頼区間
40歳2.531.34–4.77
50歳1.991.17–3.38
60歳1.561.01–2.40
70歳1.230.88–1.71
80歳0.960.75–1.23

※原著論文Table 3。年齢との交互作用はp<0.001。

この結果から、関節リウマチに伴う大腿骨近位部骨折の相対リスクは、比較的若い年代で大きい可能性が示されました。

ただし、これは若い患者さんのほうが高齢者より骨折しやすいという意味ではありません。

一般に骨折そのものの発生率は高齢になるほど上昇します。今回の結果は、同じ年齢の関節リウマチがない方と比較した場合の相対的なリスクを示しています。

高齢になる前から、骨の健康に注意することも大切と考えられます。

なぜ関節リウマチでは骨折リスクが高くなるの?

関節リウマチ患者さんの骨折リスクが高くなる理由は複数考えられます。

まず、関節リウマチではTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインが、骨代謝に影響します。

炎症に伴ってRANKLを介した破骨細胞の分化・活性化が促進され、骨吸収が亢進することが知られています。

また、関節の痛みや変形、筋力低下による活動量の減少は、骨量減少や転倒リスクの増加につながる可能性があります。

さらに、加齢、閉経、低体重、過去の骨折歴、ステロイド使用なども骨折リスクを高めます。

今回の研究では、これらの機序を直接検証したわけではありませんが、関節リウマチの骨折リスクを考える際には、こうした複数の要因を総合的に評価することが重要です。

関節リウマチ患者さんの骨粗鬆症をどう評価する?

関節リウマチの患者さんでは、関節の炎症や病気の活動性だけでなく、骨折リスクにも注意が必要です。

骨折リスクの評価には、骨密度検査に加えて、年齢、骨折歴、転倒リスク、ステロイド使用状況などを確認します。

また、将来10年間の骨折確率を推定するFRAXという評価ツールもあります。

FRAXには、関節リウマチが独立した危険因子として組み込まれています。

今回の研究は、FRAXにおける関節リウマチのリスク評価を更新するために実施されたものでもあります。

骨密度が比較的保たれている場合でも、その他の危険因子によって骨折リスクが高くなることがあるため、総合的な判断が大切です。

まとめ

 関節リウマチ患者さんでは、骨折リスクが1.5倍~2倍程度に増えるという報告でした。

ステロイドによる骨粗鬆症の影響は大きいと思われますが、ステロイドを使っていない患者でもリスクは高いという結果であり、関節リウマチ自体との関係性も示唆されます。

関節リウマチの診療では、どうしても関節の痛みや腫れ、炎症のコントロールに目が向きがちですが、骨粗鬆症や骨折にも注意が必要です。

患者さんに高齢になっても元気に生活していただくためにも、骨の健康についてもしっかり目を配っていくべきだと、改めて感じました。


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