- 2026年9月22日
喫煙は関節リウマチにどう影響する?発症リスクと治療効果について|御所南リウマチ膠原病どいクリニック(京都市中京区)
診療の際によく聞かれる質問に「リウマチにならないための生活習慣ってありますか?」、あるいは「リウマチが悪くならないように気を付けたほうがいいことはありますか?」というのがあります。
食生活など、関節リウマチとの関連が研究されている生活習慣はいくつかありますが、まず一番に禁煙をお勧めしています。
せっかくですので喫煙と関節リウマチに関する文献をご紹介します。
Smoking and Rheumatoid Arthritis. Int. J. Mol. Sci. 2014, 15, 22279-22295.
以下はAI要約を中心に一部追記・修正しています。
喫煙は関節リウマチにどう影響する?発症リスクと治療効果について
「タバコは肺や心臓に悪い」ということはよく知られていますが、実は関節リウマチ(RA)の発症や治療効果にも影響する可能性があります。
2014年に発表されたレビュー論文 Smoking and Rheumatoid Arthritis では、喫煙と関節リウマチについて、発症リスク、免疫学的な仕組み、治療への影響まで幅広くまとめられています。
喫煙すると関節リウマチになりやすい?
これまでの疫学研究では、喫煙は関節リウマチの代表的な環境リスク因子の一つと考えられています。
このレビューで紹介されているメタ解析では、喫煙者は非喫煙者と比べて、関節リウマチの発症リスクが約2倍でした。女性に限った解析でも、喫煙者では約1.3倍のリスク上昇が報告されています。
さらに重要なのは、「かなりのヘビースモーカーでなければ大丈夫」というわけではない点です。別のメタ解析では、生涯喫煙量が10 pack-years未満という比較的少ない喫煙歴でも、RA発症との関連が認められたとされています。
「pack-years(パックイヤー)」とは累積喫煙量の目安で、
1日20本を10年間=10 pack-years
となります。
特に「抗CCP抗体陽性」のリウマチとの関係が強い
喫煙とすべての関節リウマチが同じように関係しているわけではありません。
特に関連が強いのが、RF(リウマトイド因子)や抗CCP抗体などが陽性になるタイプの関節リウマチです。
喫煙によって体内で蛋白の「シトルリン化」が起こり、それに対してACPA(抗シトルリン化蛋白抗体:抗CCP抗体など)が作られることが、RA発症につながる可能性が考えられています。
さらに、HLA-DRB1 shared epitope(SE)と呼ばれる遺伝的素因を持つ人では、喫煙による血清陽性RAのリスクがより高くなることが報告されています。
つまり、
遺伝的ななりやすさ × 喫煙という環境因子
の組み合わせが、関節リウマチ発症に関係していると考えられています。
なぜタバコが免疫に影響するのか
喫煙の影響は一つの仕組みだけでは説明できません。
このレビューでは、喫煙によって酸化ストレスや慢性的な炎症が増加し、自己抗体の産生やDNAメチル化などのエピジェネティックな変化にも影響する可能性が整理されています。
実際、喫煙者ではCRPだけでなく、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-8など、関節リウマチにも深く関係する炎症性サイトカインが増加することが報告されています。
また、RA患者の滑膜細胞を用いた実験では、タバコ煙由来成分によってIL-1、IL-6、IL-8などの炎症性サイトカインの産生が増えることも示されています。
発症した後にも影響する?―治療効果との関係
喫煙の影響は、関節リウマチを「発症しやすくする」だけではない可能性があります。
特にこのレビューでは、TNF阻害薬の効果が喫煙者では低くなる可能性について複数の研究が紹介されています。
British Society for Rheumatology Biologics Registerの研究では、喫煙しているRA患者では、TNF阻害薬インフリキシマブへの臨床反応が低く、
OR 0.77(95%CI 0.60–0.99)
でした。
さらに別の研究では、喫煙者がTNF阻害薬でEULAR moderate responseを得られるオッズが、
OR 0.20(95%CI 0.05–0.83)
と低下していました。
ORが1より小さいということは、非喫煙者と比較して良好な治療反応を得られる可能性が低かったという意味です。
なぜ喫煙者で薬が効きにくくなるのかについては、TNF-αなどの炎症性サイトカイン増加、薬物代謝への影響、抗薬物抗体など複数の可能性が考えられています。
また、このレビューでは、喫煙者ではメトトレキサート・ポリグルタメート濃度が低かったという研究も紹介されており、メトトレキサートの作用にも影響する可能性が示されています。
ただし、この2014年のレビューで治療効果低下の臨床データが最も充実しているのはTNF阻害薬です。メトトレキサートについては、その後さらに研究が蓄積されています。
関節以外の症状とも関係する可能性
関節リウマチでは、肺病変、リウマトイド結節、血管炎など「関節外病変」がみられることがあります。
スウェーデンの研究では、RA診断時の喫煙は重症の関節外病変の予測因子となり、
RR 2.94
と報告されました。
一方、喫煙がX線上の関節破壊そのものを独立して進行させるかについては、研究結果が一致しておらず、ACPAを介した影響である可能性も指摘されています。
まとめ
喫煙と関節リウマチについて、現在までに特に重要なのは次の点です。
| 喫煙の影響 | 報告されている内容 |
|---|---|
| RA発症 | 喫煙者では発症リスクが約2倍との報告 |
| 少量の喫煙 | 10 pack-years未満でも発症との関連あり |
| RAのタイプ | 特にRF・抗CCP抗体陽性RAとの関連が強い |
| 遺伝との関係 | HLA-DRB1 SE × 喫煙の相互作用 |
| TNF阻害薬 | 喫煙者では治療反応が低いとの複数の報告 |
| 関節外病変 | 重症関節外病変との関連を示す研究あり |
喫煙は、単に関節リウマチを発症しやすくするだけではなく、発症後の炎症や治療反応にも影響する可能性のある因子です。
このレビューの著者らも、喫煙による酸化ストレス、炎症、自己抗体産生、エピジェネティックな変化がRAの自己免疫に関わり、さらに抗TNF治療への反応にも悪影響を及ぼす可能性があるとまとめています。
感想
喫煙は関節リウマチの発症リスクを上げるだけでなく、発症後の治療効果にも影響する可能性があることが分かります。
今回のレビュー内では、喫煙者ではTNF阻害薬に対する治療反応が低いことが複数の研究で報告されています。
また他の文献で、生物学的製剤の前に使用する、メトトレキサートの有効性も下げる可能性が報告されています。(Mod Rheumatol. 2023 Dec 22;34(1):68-78.)
喫煙をしていると、メトトレキサートで十分な効果が得られず、高額な生物学的製剤を使用が必要になる。そして導入したTNF阻害薬も効果が不十分。
このような流れになる可能性も十分考えられる報告です。
もちろん、喫煙している方すべてで治療がうまくいかなくなるわけではありませんし、禁煙すれば必ず関節リウマチを予防できるわけでもありません。
それでも「患者さん自身で変えることができるリスク因子」として禁煙の重要性が改めて分かる報告でした。