- 2026年7月20日
リウマチの関節は冷やす?温める?|御所南リウマチ膠原病どいクリニック(京都市中京区)
リウマチで通院されている患者さんによく聞かれる質問に「関節は冷やせばいいの?温めればいいの?」というものがあります。
腫れて熱を持っている場合は冷やす、腫れはないんだけどこわばって痛むようなときは温める、をお勧めしています。
せっかくなのでもっと詳しくまとめた文献がないか探してみました。
Cryotherapy and thermotherapy in the management of osteoarthritis and rheumatoid arthritis: A comprehensive review. Fundam Res. 2024 Sep 3;5(6):2409-2431.
以下はAI要約を一部追記・修正しています。
関節リウマチや変形性関節症の関節は温める?冷やす?―最新レビューからわかったこと―
2025年に掲載されたレビュー論文では、関節リウマチ(RA)と変形性関節症(OA)を対象に、**冷却療法(Cryotherapy)と温熱療法(Thermotherapy)**の作用機序や臨床効果について、基礎研究から臨床試験まで幅広くまとめられています。
レビューの結論
論文全体を通して一貫していた結論は、
「炎症が強い急性期には冷却療法、慢性的な痛みやこわばりには温熱療法が適している」
というものです。
重要なのは、「温める」「冷やす」のどちらが優れているかではなく、病期や症状に応じて使い分けることであると述べられています。
関節リウマチ(RA)ではどのような効果が期待されるのか?
冷却療法はなぜ効くのか?
冷却療法の効果として最もよく知られているのは、血管収縮による血流低下です。
これによって
- 炎症細胞の集積を抑える
- 血管透過性を低下させる
- 浮腫(腫れ)を軽減する
- 神経伝導速度を低下させ、痛みを感じにくくする
といった作用が期待されます。
さらに近年では、単なる鎮痛作用だけではなく、炎症そのものを制御する可能性も報告されています。
レビューでは、
- TNF-α
- IL-1β
- IL-6
- VEGF
などの炎症性サイトカインの低下や、Power Doppler超音波で評価した滑膜炎の改善が紹介されています。
また、全身クライオセラピーでは、
- DAS28
- HAQ
- 朝のこわばり
- 握力
- 歩行能力
などが改善したランダム化比較試験も掲載されていました。
*クライオセラピー(Cryotherapy)とは、「冷却療法」のことで、氷や保冷剤を使ったアイシングから、専用装置で全身を超低温環境に短時間さらす治療までを含む総称です。
温熱療法は「血流改善」だけではない
温熱療法は古くから、
- 血流増加
- 酸素供給の改善
- 老廃物の除去促進
- 筋緊張の緩和
- 関節可動域(ROM)の改善
によって症状を改善すると考えられてきました。
しかし、このレビューではさらに分子レベルでの作用についても詳しく解説されています。
RA滑膜線維芽細胞では、41℃で30分間加温することで、
- TNF-α
- IL-1α
- IL-1β
- IL-8
- COX-2
- ICAM-1
- VCAM-1
など炎症関連分子の発現が抑制されました。
また、Heat Shock Protein(HSP)の誘導や、炎症反応の中心的な転写因子であるNF-κB経路の抑制も報告されており、温熱療法には分子レベルで抗炎症作用を示す可能性があると考えられています。
温めると炎症も改善するのか?
レビューでは、温熱療法後に
低下したと報告された因子
- TNF-α
- IL-1β
- IL-6
- PGE₂
- CRP
増加したと報告された因子
- IL-10
- IGF-1
なども紹介されています。
ただし、著者らはこれらの多くが細胞実験や動物実験、小規模な臨床研究であり、薬物療法と同等の抗炎症効果を示したものではないことも強調しています。
そのため、温熱療法は抗リウマチ薬を補完する補助療法として位置付けるべきであるとまとめています。
RAで報告されている臨床効果
レビューでは、アイスパック、冷風療法、液体窒素による局所クライオセラピー、全身クライオセラピー、パラフィン浴、赤外線療法など、多様な治療法が紹介されています。
冷却療法では
- 疼痛
- 朝のこわばり
- DAS28
- HAQ
- 握力
- 歩行能力
- 関節可動域
の改善が比較的一貫して報告されていました。
一方、温熱療法では
- 手指痛
- 朝のこわばり
- 関節可動域
- 手の機能
の改善が多く報告され、特にパラフィン浴は比較的エビデンスが蓄積されていました。
*パラフィン浴は55℃くらいにあたためた医療用パラフィン(ろうそくのロウに似た素材)に手などを入れて温める温熱療法です。
では、変形性関節症(OA)ではどうだったのでしょうか?
このレビューでは、変形性関節症(OA)についても多数の研究がまとめられています。
OAでは自己免疫性炎症よりも、軟骨変性や力学的ストレスに伴う慢性疼痛が主体となるため、評価項目もRAとは異なります。
主なエンドポイントは、
- 疼痛(VAS)
- WOMAC
- 関節可動域(ROM)
- 歩行能力
- 筋力
などでした。
冷却療法
膝OAでは、20分程度の局所冷却を継続することで、
- 疼痛(VAS)
- WOMAC
- ROM
- 歩行能力
- 筋力
の改善が報告されています。
また、人工膝関節置換術(TKA)後では、
- 疼痛軽減
- 腫脹軽減
- ROM改善
- 鎮痛薬使用量の減少
などが比較的一貫して認められていました。
温熱療法
温熱療法では、
- 血流改善
- 軟部組織やコラーゲンの伸張性向上
- 筋緊張の緩和
- ROM改善
が主な作用として説明されています。
また、Heat Shock Protein(HSP)の誘導やNF-κBシグナルの抑制など、RAと共通する分子レベルでの作用も紹介されています。
ただし、臨床的には疼痛や関節機能の改善が中心であり、軟骨変性そのものを改善することを示したエビデンスはありません。
このレビューのまとめ
このレビューでは、関節リウマチ(RA)と変形性関節症(OA)のいずれにおいても、冷却療法・温熱療法は症状緩和に有用な補助療法となる可能性が示されました。
RAでは、
- 冷却療法は炎症や熱感を伴う急性期に有効
- 温熱療法は慢性的な疼痛や朝のこわばりの改善に有効
- Heat Shock ProteinやNF-κBを介した抗炎症作用も示唆されていました。
一方、OAでは、
- 冷却療法は疼痛や腫脹、関節機能の改善
- 温熱療法は疼痛や可動域、筋緊張の改善
が期待される一方、軟骨変性そのものを改善するエビデンスはありませんでした。
いずれの疾患でも、冷却療法・温熱療法は薬物療法や運動療法に代わるものではなく、症状を和らげる補助療法として位置付けられています。
レビュー全体を通して最も重要なメッセージは、
「炎症が強く熱感のある関節は冷やす」「慢性的な痛みやこわばりは温める」
という症状に応じた使い分けでした。
結果まとめ図

感想
全体的にはリウマチではまだ腫れが強い時期は冷やす、しっかり薬物治療をして腫れはなくなったけどまだ痛みやこわばりがあるという場合は温めるがよさそうです。
冷やす事で超音波で見える炎症まで減っていたという報告は興味深かったです。
変形性関節症は基本的には温める、ただし腫れがあるときには冷やすのがよさそうですね。
ただ薬を調節するだけではなく、こういったところまで心を配れるような診療をしていきたいと思いました。