- 2026年10月6日
- 2026年10月13日
関節リウマチは関節だけの病気ではない?肺・目・皮膚などに起こる「関節外病変」|御所南リウマチ膠原病どいクリニック(京都市中京区)
関節リウマチを診療するとき、当院では胸のレントゲン撮影も一緒にさせていただいています。
そういった時患者さんの中には、「関節リウマチなのにどうして胸のレントゲンを撮るの?」といった質問がでます。
そういった時、患者さんには関節リウマチは実は関節だけの病気ではなく、肺などにも悪さをすることが多い病気と説明させていただいています。
せっかくですので今回は関節リウマチの関節以外の症状に関しての文献をご紹介します。
Pathogenesis of Extraarticular Manifestations in Rheumatoid Arthritis—A Comprehensive Review.
Biomedicines. 2023;11:1262.
以下はAI要約を一部修正・追記しています。
関節リウマチは関節だけの病気ではない?「関節外病変」について
関節リウマチは、手や足などの関節に炎症を起こす病気として知られています。
一方で、関節リウマチは関節だけに限局した病気ではなく、免疫の異常や全身の炎症を背景として、肺、目、皮膚、血管、血液など関節以外の臓器にもさまざまな病変を起こすことがあります。
関節外病変とは?
関節リウマチに伴って関節以外に生じる病変を、一般に**関節外病変(extra-articular manifestations:EAMs)**と呼びます。
関節リウマチの関節外病変は決して珍しいものではなく、過去の研究では約40%の患者さんに何らかの関節外病変がみられると報告されています。
ただし、「何を関節外病変に含めるか」について統一された厳密な定義があるわけではありません。そのため、研究によって報告されている頻度にはかなり幅があります。
関節外病変と関連する因子としては、
リウマトイド因子(RF)陽性、ANA陽性、関節破壊、喫煙、男性、特定のHLA遺伝子型
などが報告されています。
特にRF陽性は、リウマトイド結節、血管炎、Felty症候群、漿膜炎などの関節外病変と関連しています。
ここからは主な病変を臓器ごとにみていきます。
1.肺の病変
関節リウマチの関節外病変のなかでも、臨床的に特に重要なのが肺病変です。
肺病変全体については、研究によって**10~67%**と非常に幅広い頻度が報告されています。
その内容も一つではなく、
- 間質性肺疾患(ILD)
- 気管支拡張症
- 細気管支炎
- リウマトイド結節
- 胸膜炎・胸水
- 肺高血圧
など、肺のさまざまな部分に病変を起こします。
間質性肺疾患(間質性肺炎)
なかでも重要なのが**RA関連間質性肺疾患(RA-ILD)**です。
画像上の変化まで含めると、間質性肺疾患を示唆する所見は**30~60%**に認めたという報告があります。
ただし、その多くは無症候性です。
実際に咳や息切れなどの症状を伴う間質性肺疾患については、**5~17%**程度と報告されています。
関節リウマチに伴う間質性肺疾患では、画像上、
UIP(通常型間質性肺炎)
NSIP(非特異性間質性肺炎)
が代表的なパターンです。
興味深いことに、肺病変は必ずしも関節炎のあとに起こるわけではなく、関節症状が出現する何年も前から肺病変が存在する場合もあります。
喫煙も重要です。
喫煙による気道・肺胞上皮の障害が、遺伝的素因をもつ人で自己免疫反応を誘導する可能性が考えられており、RA関連肺病変と喫煙との関連についてさまざまな研究が行われています。
気管支拡張症
気管支拡張症も関節リウマチと関連する肺病変の一つです。
画像検査や呼吸機能検査で気管支拡張性の変化を調べると、**約30%に認めたという報告があり、「気管支拡張」そのものは最大41.3%**で報告されています。
ただし、こちらも画像上の変化があっても必ず症状があるわけではありません。
間質性肺疾患による牽引性気管支拡張として生じる場合だけでなく、間質性肺疾患とは独立して生じる場合もあります。
2.皮膚:リウマトイド結節
リウマトイド結節は、代表的な皮膚の関節外病変です。
多くは肘などの伸側や、繰り返し圧力・刺激を受ける部位に生じます。
興味深いことに、リウマトイド結節は皮下だけにできるものではなく、肺などの内臓にも形成されることがあります。
肺のリウマトイド結節については、報告されている頻度が**0.4%未満~32%**と大きく異なり、多くは無症状です。
病理学的には中心部に壊死を伴う免疫性肉芽腫で、周囲をマクロファージやリンパ球などが取り囲みます。
関節滑膜炎とリウマトイド結節には共通する炎症反応があることも示されており、関節と関節外組織で共通した免疫機序が働いている可能性があります。
3.胸膜・心膜などの「膜」の病変
関節リウマチでは、
胸膜炎
心膜炎
といった、臓器を包む「膜」に炎症を起こすこともあります。
検査で胸水を調べると最大70%、心嚢液については**30~50%**に認めたという報告があります。
一方、実際に症状を伴うものはずっと少なく、
症候性胸膜炎:3~5%
症候性心膜炎:10%未満
とされています。
つまり、画像検査などで少量の胸水・心嚢液がみつかることと、臨床的に問題となる胸膜炎・心膜炎は分けて考える必要があります。
胸膜や心膜の局所ではRFや免疫複合体が産生され、関節滑膜炎と共通する炎症機序が存在することが示唆されています。
4.目の病変
眼病変も比較的よくみられ、**約18%**に何らかの眼病変が認められると報告されています。
代表的なものは、
- 乾性角結膜炎(ドライアイ)
- 上強膜炎
- 強膜炎
- 末梢性潰瘍性角膜炎(PUK)
などです。 biomedicines-11-01262
このなかでは乾性角結膜炎が最も多くみられます。
一方、強膜炎や末梢性潰瘍性角膜炎は頻度こそ高くありませんが、炎症が強い場合には眼組織の障害につながる重要な関節外病変です。
炎症性サイトカインや免疫複合体、補体、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)などが病態に関与すると考えられています。
5.血液の異常
関節リウマチでは、
- 貧血
- 好中球減少
- 血小板増加・減少
- 好酸球増加
など、さまざまな血液異常がみられます。
なかでも貧血は最も一般的な血液学的異常の一つです。
慢性炎症に伴う貧血では、TNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインによって、
鉄の利用が抑制されること、赤血球前駆細胞が抑制されること、エリスロポエチン産生が抑制されることなどが関係します。
また、炎症によってヘプシジンが増加すると、体内に鉄が存在していても血液中で利用しにくくなる「機能的鉄欠乏」の状態になります。
一方で、NSAIDsによる消化管出血などを背景とした鉄欠乏性貧血が合併することもあり、両者が同時に存在する場合もあります。
6.Felty(フェルティ)症候群
Felty症候群は、
関節リウマチ
+好中球減少
+脾腫
を特徴とする、まれな関節外病変です。
典型的には長期間経過した血清反応陽性の関節リウマチに生じ、皮膚や呼吸器を中心とした感染症を繰り返すことがあります。
好中球減少の原因には、骨髄での顆粒球産生障害、成熟障害、末梢での好中球破壊、脾臓への好中球の集積など、複数の機序が関係すると考えられています。
7.リウマトイド血管炎
リウマトイド血管炎は、関節リウマチに伴って小~中型血管に炎症を起こす、まれですが重要な関節外病変です。
主に、
皮膚
末梢神経
が障害されます。
皮膚では、爪周囲の梗塞、紫斑、網状皮斑、指趾虚血などを生じることがあります。
末梢神経の血管が障害されれば、多発単神経炎などの原因になります。
典型的には関節リウマチ発症から10~14年後に生じるとされ、興味深いことに、その時点では関節炎そのものの活動性が低い場合もあります。
RF・抗CCP抗体陽性との関連が強く、喫煙もリスク因子の一つです。
8.腎臓の病変
関節リウマチ患者さんでは7~10%程度に腎機能障害がみられるとされています。
ただし、ここは「関節リウマチによる関節外病変」として解釈するときに注意が必要です。
腎障害の多くはRAそのものが直接腎臓を障害するというより、高齢、脂質異常症、尿酸値などの一般的な心血管リスクや、NSAIDs・一部の抗リウマチ薬などの影響が関係します。
腎生検では、
メサンギウム増殖性糸球体腎炎
膜性腎症
AAアミロイドーシス
などが報告されています。
特にAAアミロイドーシスは、コントロール不良の慢性炎症によって血清アミロイドA(SAA)が持続的に増加し、腎臓などに沈着して起こります。
一方、治療の進歩によって、現在ではRAに伴う腎障害、特にAAアミロイドーシスは以前より減少しています。
「関節外病変」と一括りにしにくいものもある
今回の総説を読むうえで少し注意したいのが、「関節外病変」という言葉がかなり広い意味で使われている点です。
例えば神経症状として手根管症候群や頸椎病変も取り上げられています。
ただ、手根管症候群は関節リウマチによって神経そのものに炎症が起こるというより、手首の滑膜炎や腱鞘炎によって正中神経が圧迫されることによる二次的な神経障害です。頸椎病変も同様に、関節炎と骨・靱帯の構造変化に伴うものです。 biomedicines-11-01262
一方、血管炎によって神経を栄養する血管が障害されて起こる虚血性ニューロパチーは、全身性炎症による「関節外病変」として性格が異なります。
同じように、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性心血管疾患についても、この総説では関節外病変の一つとして詳しく扱われています。
RA患者では一般人口と比較して、
心血管イベント:48%増加
心血管死亡:52%増加
というメタ解析が紹介されています。
ただし、これは間質性肺疾患、強膜炎、血管炎などのような「RAの炎症が特定の臓器に直接病変を形成するもの」とは少し異なります。
一般的な心血管危険因子に加えて、RAに伴う慢性炎症や免疫異常が動脈硬化を促進する、という側面を持つ病態です。
そのため、関節リウマチに伴う「関節外の問題」を整理すると、
① RAそのものの全身性炎症による関節外病変
② 関節・腱鞘の炎症や構造変化から二次的に起こる症状
③ RAの慢性炎症などを背景として増加する併存疾患
が含まれていると考えると理解しやすそうです。
まとめ
関節リウマチは関節炎を中心とする疾患ですが、全身性の自己免疫疾患でもあります。
代表的な関節外病変として、
間質性肺疾患などの肺病変
リウマトイド結節
胸膜炎・心膜炎
強膜炎などの眼病変
Felty症候群
リウマトイド血管炎
などがあります。
なかには関節症状より前に出現するものもあれば、長期間の関節リウマチを経て現れるものもあります。
また、一口に「関節外病変」といっても、手根管症候群のように関節・腱鞘炎から二次的に起こるものや、動脈硬化性心血管疾患のように慢性炎症を背景としてリスクが上昇する病気まで含まれており、その成り立ちは一様ではありません。
今回の総説は、**「関節リウマチは関節だけを見る病気ではない」**ということを、さまざまな臓器の病態から整理したレビューでした。
感想
関節リウマチでもちろん重要なのは関節症状ですが、意外と関節以外にも症状がある方が多いことが分かります。
特に間質性肺炎の合併は問題になることが多く、間質性肺炎合併例では5年後の死亡率が2倍以上だったという報告もあります。(Ann Rheum Dis. 2017;76:1700-1706)
また、高血圧・脂質異常症・糖尿病などによる動脈硬化性疾患も重要な合併症です。関節リウマチの慢性炎症も心血管リスク上昇に関与すると考えられています。
関節リウマチ診療では、関節の腫れや痛みだけではなく、肺をはじめとした関節外病変や全身の合併症にも目を配ることが重要だと改めて感じさせられるレビューでした。