- 2026年9月1日
- 2026年9月4日
関節リウマチの薬は減らせる?寛解後の減薬・中止について|御所南リウマチ膠原病どいクリニック(京都市中京区)
関節リウマチの治療では、外来毎に病気の活動性を評価し、活動性が残っているようであればメトトレキサートなどの抗リウマチ薬を増量し、それでも治療効果が不十分であれば生物学的製剤やJAK阻害薬などを追加していきます。
一方で患者さんから「薬を減らすことはできる?」「いつか薬をやめることはできますか?」など減薬に関する質問をよくされます。
どのような患者さんで薬を減らせるかについては、まだまだ悩ましいところがあります。
そこで今日は関節リウマチの減薬に関する文献をご紹介。
Tapering of disease-modifying antirheumatic drugs: an overview for daily practice. Lancet Rheumatol. 2021 Sep;3(9):e659-e670.
以下はAI要約を中心に追記・修正しています。
関節リウマチの薬は減らせる?
まず、「減薬」と「中止」は同じではありません
関節リウマチの薬を減らす方法には、大きく分けて次のような方法があります。
| 減薬の方法 | 具体例 |
|---|---|
| ① 併用している薬の1剤を中止する | MTX+生物学的製剤から1剤を中止 |
| ② 併用薬の量を減らす | 半量にする、投与間隔を延ばす |
| ③ 単剤治療を徐々に減量する | 最低有効量を目指して少しずつ減量 |
さらに段階的に薬を減らしていき、最終的にすべての抗リウマチ薬を中止した状態で寛解が続けば、**drug-free remission(薬を使わない寛解)**となります。
ただし、
「薬を減らせること」と「薬を完全にやめられること」は別
と考える必要があります。
① 生物学的製剤は減らせる?
生物学的製剤を使用して寛解している患者さんでは、
- 投与量を減らす
- 投与間隔を延ばす
- 最終的に中止する
といった方法が研究されています。
一方で、完全に中止すると再燃が増えることも分かっています。
このレビューでまとめられた研究では、生物学的製剤を中止した場合、継続した場合と比べて再燃が約30〜33%多くなったという報告があり、最大で66%が寛解または低疾患活動性を失った研究もありました。
そのため、いきなり中止するのではなく、
まず減量したり、投与間隔を延ばしたりする
という方法がよく検討されます。
例えば、TNF阻害薬であるアダリムマブやエタネルセプトを減量したOPTTIRA試験では、66%まで大きく減量した群では、33%減量群より再燃リスクが高くなりました。
つまり、
減薬する場合でも、減量幅が大きいほど再燃リスクが高くなる可能性が示唆されます。
またDRESS試験では、TNF阻害薬の投与間隔を疾患活動性に応じて徐々に延ばした群と通常量を継続した群を3年間追跡しました。
その結果、12週間以上持続する「大きな再燃(major flare)」は、
| 治療 | Major flare |
|---|---|
| 投与間隔を延長 | 10% |
| 通常量を継続 | 12% |
と、大きな差はありませんでした。
患者さんを選び、病気の状態を確認しながら行えば、投与間隔を延ばす方法は現実的な選択肢と考えられます。
② メトトレキサートなどの抗リウマチ薬も減らせる?
メトトレキサート(MTX)などの従来型抗リウマチ薬についても減薬の研究が行われています。
代表的なのがARCTIC REWIND試験です。
少なくとも12か月間安定して寛解していた155人を、
- csDMARDを通常量のまま継続する群
- 半量に減量する群
に分けました。
1年間で再燃した患者さんは、
| 治療 | 1年間の再燃率 |
|---|---|
| 通常量を継続 | 6% |
| 半量に減量 | 25% |
でした。
つまり、半量にすると再燃は増えました。
一方で、
半量にしても約75%の患者さんでは1年間再燃しなかった
という結果でもあります。
ただし、通常量を継続した群と比較すると再燃リスクは明らかに高くなっています。
そのため、
「寛解しているから全員減らす」
でも、
「再燃する可能性があるから誰も減らさない」
でもありません。
病気の状態やこれまでの経過、副作用などを見ながら患者さんごとに判断することになります。
③ 「減量」と「完全中止」では再燃率が違う
減薬について非常に分かりやすいのがRETRO試験です。
メトトレキサートなどの従来型抗リウマチ薬(csDMARD)や、生物学的製剤(bDMARD)を使用して寛解している患者さんを、
- 使用しているcsDMARD / bDMARDをそのまま継続
- 使用しているcsDMARD / bDMARDを50%に減量
- 50%に減量した後に中止
の3群に分けました。
※この試験では、使用しているcsDMARD / bDMARDを50%まで減量する比較的積極的な減薬方法がとられています。
中間解析における12か月後の再燃率は、
| 治療方針 | 1年間の再燃率 |
|---|---|
| csDMARD / bDMARDを継続 | 15.8% |
| csDMARD / bDMARDを50%に減量 | 38.9% |
| 50%減量 → 中止 | 51.9% |
でした。
薬を減らすと再燃率は上がり、完全に中止するとさらに上がる
傾向がみられます。
そのため、
「薬をゼロにすること」そのものを治療目標にする必要はありません。
病気を安定させながら、その患者さんにとって必要な治療量を探していくことが大切です。
④ 薬を完全にやめられる患者さんも一部にはいる
では、薬を完全にやめることは不可能なのでしょうか。
一部の患者さんでは可能です。
BeSt研究では、508人の患者さんについて、病気の状態を確認しながら薬を徐々に減らしていったところ、
115人(23%)がdrug-free remission
に到達しました。
ただし、その115人のうち、
53人(46%)はその後再燃
しました。
一方、再燃した患者さんで最後に中止した抗リウマチ薬を再開すると、
- 74%:再び寛解
- 21%:低疾患活動性
まで改善しました。
つまり、
減薬後に再燃したからといって、治療が取り返しのつかない状態になるわけではない
という点も重要です。
病気が再び動き始めた場合には、速やかに薬を元の量に戻したり、再開したりすることで、多くの患者さんでは再び病気をコントロールすることができます。
⑤ どんな患者さんなら減薬しやすい?
これまでの研究では、生物学的製剤を減量・中止しても再燃しにくい患者さんの特徴として、
- 病気の活動性が非常に低い
- 早期の関節リウマチ
- ACPA(抗CCP抗体)陰性
などが報告されています。
ただし、このレビューでは、
現時点では「この患者さんなら安全に薬を中止できる」と正確に予測することはできない
としています。
また、
- 何か月寛解が続いたら減らしてよいのか
- どの程度の速度で減らすのか
- どこまで投与間隔を延ばすのか
といった点についても、明確な答えはまだありません。
⑥ 減薬するときに大切なのは「その後のフォロー」
薬を減らすこと以上に大切なのが、
減らしたあとに病気の状態をきちんと確認すること
です。
このレビューの著者らは、実際の診療では持続的なDAS寛解、しばしば6か月以上の寛解を確認した患者さんで減薬を検討し、
- 関節症状
- 疾患活動性
- 画像所見
- 薬の副作用
などを見ながら、減量・中止・再増量を判断するとしています。
そして、
再燃した場合に薬を再開したり元の量に戻したりすることを、減薬の「失敗」と考える必要はない
という考え方も示されています。
これは実際の診療でも非常に大切だと思います。
患者さんが最も心配しているのは「再燃」
減薬についての患者さんの意識を調べた研究では、患者さんが特に心配していたのは、
「薬を減らして病気が悪くならないか」
ということでした。
また、
「悪くなったときにすぐ診てもらえるのか」
という点も重要視されています。
そのため、減薬を行う場合には、
定期的に病気の状態を確認し、再燃した場合には速やかに治療を戻せること
が重要です。
患者さんへの十分な説明と、患者さんと主治医が相談しながら治療方針を決めていくことも大切とされています。
まとめ
関節リウマチの治療では、
「一度薬を始めたら、一生同じ量を続けなければならない」
というわけではありません。
寛解が十分に続いている患者さんでは、薬の量を減らしたり、生物学的製剤の投与間隔を延ばしたりできる場合があります。
一方で、研究結果からは、
| 減薬について分かっていること | 内容 |
|---|---|
| 薬の減量 | 可能な患者さんはいる |
| 減量後 | 再燃リスクはある程度上昇する |
| 完全中止 | 減量よりさらに再燃しやすい |
| drug-free remission | 一部の患者さんでは可能 |
| 再燃した場合 | 多くは治療再開により再コントロール可能 |
| 誰なら安全に中止できるか | 現時点では正確には予測できない |
したがって、
「薬をゼロにする」ことそのものを目標にするのではなく、病気をしっかり抑えながら、その患者さんにとって必要な治療量を考えていく
というのが大切です。
薬を減らしてみたい場合も、自己判断で中止するのではなく、主治医と相談しながら少しずつ調整していくことが重要です。
感想
やはり多くの患者さんで、薬を完全中止した状態を長期間維持することは、なかなか難しいようです。
一方で病気が落ち着いている患者さんでは、薬の量を減らしたり、生物学的製剤の投与間隔を伸ばしたりすることは十分検討できる結果でした。
また、もし再燃してしまっても治療を仕切りなおすことは十分可能というのも心強いメッセージになると思います。
関節リウマチのような慢性疾患では、治療とも長く付き合うことになるため、主治医・患者でしっかり話し合って治療を調節していくことが重要だと改めて感じました。