- 2026年8月18日
関節リウマチでも妊娠できる?妊娠・出産への影響とリウマチの薬について|御所南リウマチ膠原病どいクリニック(京都市中京区)
関節リウマチの発症年齢は以前と比べてやや高齢化していますが、それでも比較的若い年代で発症する患者さんも少なくありません。
実際、当院にも20歳代から80歳代まで幅広い年代の患者さんが通院されています。
関節リウマチは女性に多い病気でもあり、中には将来の妊娠・出産について心配される方もいらっしゃいます。
せっかくですので今回は関節リウマチと妊娠に関しての文献を紹介させていただきます。
Management of pregnant with rheumatoid arthritis: Preconception care, pregnancy and lactation strategies, and maternal-fetal outcomes.
Best Pract Res Clin Rheumatol. 2025;39:102022.
以下はAI要約を一部追記・修正しています。
関節リウマチがあると妊娠しにくい?
関節リウマチがあるからといって、妊娠できないわけではありません。
ただ、一般の女性と比べると、妊娠までに時間がかかる方は少し多いようです。
今回のReviewでは、関節リウマチの女性の42%で、妊娠成立まで12か月以上かかったとされています。
また、不妊治療を受ける割合も、
関節リウマチ患者:23.0%
一般女性:5.1%
と、関節リウマチの患者さんで高いことが報告されています。
ここで大切なのは、リウマチの病勢そのものが妊娠しやすさに関係するという点です。
疾患活動性が高いほど妊娠成立まで時間がかかりやすく、NSAIDsやステロイドの使用も妊孕性低下と関連しています。
つまり、
「妊娠したいからリウマチの薬を全部やめる」
ではなく、
「妊娠に使える薬に切り替えながら、リウマチをしっかり落ち着かせる」
ことが重要になります。
妊娠するとリウマチは良くなる?
「妊娠するとリウマチは良くなる」
という話は昔からよく知られています。
実際、今回のReviewでも、妊娠中に関節リウマチの疾患活動性が改善する患者さんは、
48~65%
とされています。
一方で、出産後には、
約半数(46.7%)
で再びリウマチが悪化します。
つまり、妊娠中に良くなる方は多いものの、全員が良くなるわけではありません。
また、妊娠中に症状が落ち着いていても、産後には再燃しやすくなります。
そのため、妊娠中だけでなく、出産後まで見据えて治療を考えておくことが大切です。
関節リウマチがあると妊娠・出産のリスクは上がる?
多くの患者さんは問題なく妊娠・出産できます。
ただし、一般女性と比べると、一部の妊娠合併症が少し増えることが報告されています。
代表的なのが早産です。
Reviewでは、関節リウマチ患者さんの早産率は、
8.0~15.3%とされています。
Washington州のデータでは、
関節リウマチ:13.6%
一般女性:7.2%
フランスの大規模データでも、
関節リウマチ:10.0%
一般女性:5.5%
と、関節リウマチの患者さんで早産が多い傾向がみられました。
ほかにも、妊娠高血圧症候群、妊娠高血圧腎症、低出生体重、帝王切開などがやや増える可能性があります。
一方で、死産は一般女性と明らかな差がなかった研究もあり、関節リウマチそのものによって先天奇形が明らかに増えるとは言い切れません。
必要以上に心配する必要はありませんが、関節リウマチのない方の妊娠と比べると、少し注意して経過をみていく必要があります。
一番大事なのは「妊娠前にリウマチを落ち着かせること」
今回のReviewで、特に大切なのがこの点です。
妊娠中のリウマチの疾患活動性が高いと、
早産:aOR 2.02
低出生体重:aOR 1.51
SGA(妊娠週数のわりに小さく生まれること):aOR 1.53
帝王切開:aOR 1.25
*aOR(調整オッズ比)は、年齢など他の要因を考慮したうえで、どの程度リスクが高くなるかを示した数字です。
と、妊娠・出産に関するリスクが高くなっていました。
さらに、41研究をまとめたメタ解析では、高疾患活動性の患者さんでは、早産リスクがOR 5.61まで上昇していました。
つまり、
「薬を使っていること」だけを心配するのではなく、「リウマチが悪い状態のまま妊娠しないこと」も大切
ということです。
妊娠初期に生物学的製剤を中止した患者さんでは、妊娠中の再燃が増えたという報告もあります。
「赤ちゃんのために薬を全部やめた方がいい」
とは限りません。
今では、妊娠中でもリウマチをかなりコントロールできます
近年は、妊娠中に使える治療薬が増えています。
妊娠前から治療計画を立て、妊娠中にも使える薬でしっかり治療したPreCARA研究では、
妊娠後期には90.4%の患者さんが寛解
に到達していました。
一方、こうした治療戦略が十分に確立していなかった過去の患者群では47.3%でした。
かなり大きな違いです。
「妊娠すると薬が使えないから、リウマチは我慢するしかない」
という時代ではなくなってきています。
妊娠中に使えるリウマチの薬は?
今回のReviewでは、妊娠中にも使用できると考えられている薬剤として、
ステロイド
サラゾスルファピリジン
タクロリムス
ヒドロキシクロロキン
TNF阻害薬
などが挙げられています。
ただし、「使える=どんどん使ってよい」という意味ではありません。
特にステロイドは、できるだけ少ない量で使うことが大切です。
メトトレキサートは妊娠前に中止します
関節リウマチでよく使うメトトレキサート(MTX)は、妊娠中には使用できません。
ACRでは、妊娠を希望する1~3か月前までに中止することが推奨されています。
妊娠成立後にMTXへ曝露された場合、流産や先天異常との関連が報告されています。
そのため、MTXを使っている方が妊娠を希望する場合には、
自己判断で中止するのではなく、妊娠前に主治医へ相談して、妊娠中にも使える薬へ切り替える
ことが大切です。
生物学的製剤は妊娠中にも使える?
TNF阻害薬は、現在では妊娠中にも比較的使いやすい薬剤と考えられています。
ただし、薬によって胎盤を通る量が大きく違います。
ある研究では、出生時の臍帯血中濃度は母体血と比べて、
インフリキシマブ:160%
アダリムマブ:153%
セルトリズマブ ペゴル:3.9%
でした。
セルトリズマブ ペゴルは胎盤移行が非常に少ないことが特徴です。
一方で、アバタセプト、IL-6阻害薬、リツキシマブ、JAK阻害薬については、妊娠中の安全性データがまだ十分ではありません。
妊娠を考え始めた段階で、今使っている薬を一度整理しておくと安心です。
出産後は約半数で再燃します
妊娠中にリウマチが良くなっていても、出産後には再び悪くなることがあります。
今回のReviewでは、約半数で産後に再燃するとされています。
赤ちゃんが生まれた後は、授乳や睡眠不足、育児などで生活も大きく変わります。
だからこそ、妊娠中だけでなく、
「出産後にリウマチが悪くなったらどうするか」
まで事前に相談しておくことが大切です。
関節リウマチがあっても授乳できる?
現在では、授乳中にも使用できるリウマチの薬が増えています。
PreCARA研究では、関節リウマチ患者さんの授乳率は、
産後4~6週:60.2%
12週:39.8%
26週:26.3%
で、一般女性の、
59%、41%、28%
とほとんど差がありませんでした。
「リウマチの薬を再開するから授乳できない」
とは限りません。
授乳も希望する場合は、妊娠中からその希望を主治医に伝えておくとよいでしょう。
生物学的製剤を使った場合は、赤ちゃんのワクチンにも注意
妊娠後半に一部の生物学的製剤を使用すると、胎盤を通して赤ちゃんにも薬が移行します。
例えば、新生児の血液から薬剤が消失するまでに、
アダリムマブ:約4か月
インフリキシマブ:約7.3か月
かかったという報告があります。
そのため、妊娠後半まで一部の生物学的製剤を使用した場合には、出生後の生ワクチンの時期に注意が必要になることがあります。
妊娠中に使った薬については、出産する産婦人科や赤ちゃんを診る小児科にも伝えておくことが大切です。
まとめ
関節リウマチがあっても、現在では多くの患者さんが妊娠・出産を目指すことができます。
今回のReviewで特に印象的なのは、
妊娠成立まで12か月以上かかる方が42%
妊娠中にリウマチが改善する方は48~65%
一方、産後は約半数で再燃する
リウマチの病勢が高いと早産や低出生体重などのリスクが上がる
妊娠中にも使用できるリウマチの薬は複数ある
という点です。
妊娠を考えている方に一番お伝えしたいのは、
「妊娠したいから薬を全部やめる」のではなく、妊娠に適した薬へ変更しながら、リウマチをしっかりコントロールすることが大切
ということです。
妊娠が分かってから慌てて薬を変更するのではなく、できれば妊娠を考え始めた段階で主治医に相談してください。
妊娠前から準備しておくことで、より安心して妊娠・出産を目指すことができます。
感想
関節リウマチ患者さんには若い女性も多く、本人が妊娠・出産を希望されるなら、それを最大限かなえてあげたいというのが医療現場の気持ちです。
そのためには、妊娠中でも使用可能な薬剤で、しっかり病気を落ち着けることの重要性が改めて示されています。
またすぐに妊娠を予定している方でなくても、膠原病妊娠外来などで一度しっかり専門の医師からお話を聞いてみるのもよいかもしれません。希望される方はもちろん当院からも紹介可能です。
ただ病気を抑えるだけではなく、その方が望む人生を送れるようにすることも治療の大切な目標の一つだと思います。
妊娠・出産を含め、ライフプランについても主治医と相談しながら治療を調整していきましょう。