目次

関節リウマチで
使用されるお薬

関節リウマチでは、まずメトトレキサート(MTX)による治療を開始することが基本です。
一方で、肝機能障害や腎機能障害、妊娠・授乳中などの理由でMTXを使用できない場合には、患者さんの病状や合併症、妊娠・出産の希望などを考慮し、他の抗リウマチ薬(csDMARD)を選択します。
関節の痛みや腫れが強い場合には、症状を早く改善する目的で、少量のステロイドを短期間併用することがあります。ステロイドは長期間の使用による副作用があるため、症状が改善したらできるだけ早く減量・中止することが基本です。
これらの治療でも病気の活動性が十分に抑えられない場合には、生物学的製剤(バイオ製剤)やJAK阻害薬の追加や切り替えを検討します。
治療薬の選択は、病気の活動性だけでなく、年齢、合併症、既往歴、妊娠・出産の希望、ライフスタイルなどを総合的に考慮し、患者さん一人ひとりに合わせて決定します。

抗リウマチ薬

メトトレキサート(MTX)

関節リウマチ治療の第一選択薬
メトトレキサート(MTX)は、現在の関節リウマチ治療の中心となるお薬です。
炎症を抑えて関節の痛みや腫れを改善するだけでなく、関節破壊の進行を防ぐ効果が確認されており、多くの患者さんで第一選択薬として使用されています。
MTXは通常、週1回内服します。また、口内炎や吐き気、肝機能障害などの副作用を軽減するためにMTXを服用した翌日または2日後に葉酸を併用します。
効果が現れるまでには一般的に4~8週間程度かかります。すぐに効果を実感できない場合でも、自己判断で中止せず、定期的に診察を受けながら治療を続けることが大切です。
MTXで十分な治療効果が得られない場合や、副作用などの理由で十分な量まで増量できない場合には、生物学的製剤(バイオ製剤)やJAK阻害薬の追加・変更を検討し、病気の活動性をさらに抑えて寛解を目指します。
一方で、妊娠中・授乳中の方や妊娠を希望される方では、MTXを使用できません。また、重い肝機能障害や腎機能障害がある方では使用できない場合や慎重な投与が必要となる場合があります。そのため、患者さんの状態や合併症、将来の妊娠・出産の希望なども考慮し、最適な治療薬を選択します。

Q.MTXだけでどれくらいリウマチはよくなるの?

A. MTXで約6割の患者さんで病気を良好にコントロールできたという報告もあります。(BMC Rheumatol. 2024 Sep 12;8(1):42.)

Q.MTXはどれくらいの量を飲むの?

A. 通常、6~8 mg/週程度から開始し、治療効果や副作用を確認しながら徐々に増量します。必要に応じて16 mg/週まで使用することができます。
一方、有効性だけでなく副作用や安全性も考慮するため、すべての患者さんで最大量まで増量するわけではありません。特に腎機能が低下している方や高齢者では、より少ない用量で治療を行うことがあります。
日本で行われた早期関節リウマチ患者さんを対象としたC-OPERA試験でも、MTXを16 mg/週まで増量する治療計画が採用されていましたが、実際に16 mg/週まで増量できた患者さんは約3割で、平均投与量は約11.6 mg/週でした(Ann Rheum Dis. 2016 Jan;75(1):75-83.)。

その他の抗リウマチ薬(csDMARD)

メトトレキサートが使用できない場合や、メトトレキサートだけでは十分な効果が得られない場合には、他の抗リウマチ薬を使用します。

サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN®)

サラゾスルファピリジンは1938年に関節リウマチ治療薬として開発され、日本では1999年にメトトレキサート(MTX)が使用できるようになるまで、長年にわたり関節リウマチ治療の中心的な薬剤として使用されてきました。
現在ではMTXが第一選択薬となっていますが、MTXが使用できない患者さんや、MTXだけでは十分な治療効果が得られない患者さんに対する追加治療として、現在でも重要な役割を担っている抗リウマチ薬です。
通常は1日1000 mg(朝500mg・夕500mg)を内服します。当院では250 mgを1日2回または500 mgを1日1回から開始し、有効性や副作用を確認しながら徐々に増量しています。
MTXと比較すると薬剤継続率はやや低いものの、長期的な臨床効果には大きな差が認められなかったという報告もあります(Rheumatology (Oxford). 2012;51(4):670-678.)。
比較的安全性の高い薬剤ですが、皮疹、消化器症状、肝機能障害、血球減少などの副作用がみられることがあります。そのため、治療開始後は定期的に血液検査を行いながら、安全性を確認して治療を進めます。
また、サラゾスルファピリジンは妊娠中や妊娠を希望される方でも使用可能とされており、若い女性や妊娠・出産を希望される患者さんでは、現在でも重要な治療選択肢の一つとなっています。

イグラチモド(ケアラム®・コルベット®)

イグラチモドは、日本で開発された比較的新しい抗リウマチ薬で、2012年に承認されました。
国内で行われた臨床試験では、約6割の患者さんで症状の改善が認められ、長年使用されてきたサラゾスルファピリジンと同程度の有効性が示されています(Mod Rheumatol. 2007;17(1):1-9.)。
また、メトトレキサート(MTX)だけでは十分な治療効果が得られない患者さんに追加することで、関節症状の改善が期待できることも報告されています(Mod Rheumatol. 2014;24(3):410-418.)。
炎症性サイトカイン(TNF-αやIL-6など)の産生を抑え、免疫の過剰な働きを調整することで、関節の炎症を改善し、関節破壊の進行を抑える効果が期待されています。(Life (Basel). 2021 May 20;11(5):457.)
通常は1回25mgを1日2回(朝・夕)内服します。当院ではまず1日1回25 mgから開始し、有効性や副作用を確認しながら徐々に増量しています。
効果が現れるまでには一般的に4~8週間程度かかるため、すぐに効果を実感できなくても、自己判断で中止せず継続することが大切です。
比較的安全性の高い薬剤ですが、肝機能障害、消化器症状、血球減少などの副作用がみられることがあります。そのため、治療開始後は定期的に血液検査を行いながら、安全性を確認して治療を進めます。
また、ワルファリンとは併用禁忌であり、一緒に服用するとワルファリンの作用が強くなって出血しやすくなるため、併用することはできません。

ブシラミン(リマチル®)

ブシラミンは、日本で開発され、1987年から長年にわたり関節リウマチ治療に使用されてきた薬剤で、現在でも患者さんの状態に応じて使用されています。
国内の臨床試験では、メトトレキサート(MTX)8 mg/週と同程度の治療効果が示されており、MTXと併用することで治療効果がさらに向上することも報告されています(Mod Rheumatol. 2005;15(5):323-328.)。
通常は1回100 mgを1日2~3回内服します。当院では、副作用をできるだけ少なくするため、少ない用量から開始し、有効性や副作用を確認しながら徐々に増量しています。
効果が現れるまでには一般的に4~8週間程度かかるため、すぐに効果を実感できなくても、自己判断で中止せず継続することが大切です。
比較的安全性の高い薬剤ですが、蛋白尿が比較的特徴的な副作用として知られています。そのため、治療中は定期的に尿検査を行い、蛋白尿が出ていないか確認しながら治療を進めます。
また、味覚異常、皮疹、肝機能障害、血球減少などの副作用がみられることがあるため、定期的に血液検査を行い、安全性を確認しながら治療を行います。
さらに、黄色爪症候群と呼ばれる比較的まれな副作用が報告されています。爪が黄色く変色したり厚くなったりするほか、胸水を伴うこともあります。内服中にこのような症状がみられた場合には、胸部レントゲン検査などの追加検査を行い、必要に応じて治療内容を見直します。
現在では、メトトレキサート(MTX)が使用できない患者さんや、他の抗リウマチ薬で十分な治療効果が得られない患者さんに対する治療選択肢の一つとなっています。

タクロリムス(プログラフ®)

タクロリムスは、免疫細胞(T細胞)の働きを調節する免疫抑制薬で、関節リウマチだけでなく、臓器移植や膠原病などさまざまな疾患で使用されている薬です。
通常は3 mgを1日1回内服します。高齢の患者さんでは1.5 mgから開始することが推奨されており、当院でも年齢や体格、腎機能などを考慮しながら投与量を調整しています。また、安全かつ十分な治療効果を得るため、定期的に内服約12時間後の血中濃度を測定しながら投与量を調整しています。そのため、採血を行う日は前日の夕方に内服し、翌朝に採血を受けていただくことが一般的です。
効果が現れるまでには一般的に2~8週間程度かかるため、すぐに効果を実感できなくても、自己判断で中止せず継続することが大切です。

他の抗リウマチ薬で十分な治療効果が得られなかった患者さんを対象とした臨床試験では、約5割の患者さんで症状の改善が認められました(J Rheumatol. 2004;31(2):243-251.)。
また、メトトレキサート(MTX)で十分な治療効果が得られなかった患者さんや、副作用などによりMTXが使用できなかった患者さんを対象とした試験でも、約3割の患者さんで症状の改善が認められています(Arthritis Rheum. 2002;46(8):2020-2028.)。
さらに、MTXなどの抗リウマチ薬へ追加することで治療効果が向上することも報告されており(Mod Rheumatol. 2011;21(5):458-468.)、現在ではMTXや他の抗リウマチ薬だけでは十分な治療効果が得られない患者さんに対する追加治療として広く使用されています。
比較的有効性の高い薬剤ですが、腎機能障害、高血圧、血糖値の上昇、手のふるえ(振戦)などの副作用がみられることがあります。そのため、治療中は定期的な血液検査や血圧測定を行い、副作用がないか確認しながら治療を進めます。
また、グレープフルーツやグレープフルーツジュースは薬の血中濃度を上昇させ、副作用が起こりやすくなるため、内服中は摂取を避ける必要があります。
さらに、サラゾスルファピリジンと同様に妊娠中も使用可能とされており、妊娠を希望される患者さんでも使用を検討できる薬剤です。

生物学的製剤
(バイオ製剤)

炎症の原因をピンポイントで抑える治療
生物学的製剤(バイオ製剤)は、関節リウマチの炎症を引き起こしている物質や免疫細胞を標的として作用するお薬です。
メトトレキサート(MTX)などの抗リウマチ薬だけでは十分な治療効果が得られない患者さんに使用され、関節の痛みや腫れを改善するだけでなく、関節破壊の進行を大きく抑える効果が確認されています。
2003年頃から日本でも使用されるようになり、関節リウマチ治療は大きく進歩しました。現在では、生物学的製剤やJAK阻害薬の登場により、多くの患者さんで寛解(症状がほとんどない状態)を目指せるようになっています。
現在日本では、作用する仕組みの違いから主に3種類の生物学的製剤が使用されています。

TNF阻害薬

TNF(腫瘍壊死因子)は、関節リウマチで炎症を引き起こす代表的なサイトカインです。TNF阻害薬は、このTNFの働きを抑えることで関節の炎症を改善し、関節破壊の進行を抑制する効果が確認されています。
現在、日本では6種類のTNF阻害薬が使用されています。薬剤によって、点滴または自己注射(皮下注射)といった投与方法や投与間隔が異なります。患者さんの病状や合併症、通院のしやすさ、ライフスタイルなどを考慮して最適な薬剤を選択します。

薬剤 投与方法 投与間隔
インフリキシマブ 点滴 導入後8週ごと
エタネルセプト 自己注射 週1~2回
アダリムマブ 自己注射 2週ごと
ゴリムマブ 自己注射 4週ごと
セルトリズマブ ペゴル 自己注射 2~4週ごと
オゾラリズマブ 自己注射 4週ごと

一部の薬剤では、先行品より薬価を抑えたバイオシミラー(バイオ後続品)も使用できます。バイオシミラーは、通常のジェネリック医薬品とは異なりますが、先行品と同等・同質の品質、安全性、有効性が確認された薬剤です。
TNF阻害薬は日本で20年以上使用されており、有効性や安全性に関するデータが豊富に蓄積されています。一方で、免疫の働きを調整する薬であるため、肺炎などの感染症には注意が必要です。
特に、過去に感染した結核が再び活動性を持つ「結核の再活性化」が起こることがあります。そのため、治療開始前には胸部レントゲン検査やインターフェロンγ遊離試験などを行い、潜在性結核感染の有無を確認します。必要な場合には、TNF阻害薬を開始する前から結核の予防薬を内服します。
また、妊娠中や妊娠を希望される患者さんでも、病状と治療の必要性を考慮したうえで使用を検討できます。特にセルトリズマブ ペゴルとエタネルセプトは胎盤を通過しにくいことが報告されており、妊娠中にも比較的選択しやすい薬剤と考えられています。

Q.どれくらい効果が期待できるの?

A.各薬剤は下記のような臨床試験が実施されており、いずれも約60%の患者さんに一定以上の症状改善(ACR20)が認められています。また、関節の痛みや腫れを改善するだけでなく、関節破壊の進行を有意に抑制することも数多くの臨床試験で示されています。

  • インフリキシマブ(レミケード®)
    ATTRACT試験(Lancet. 1999;354:1932-1939.)
  • エタネルセプト(エンブレル®)
    TEMPO試験(Lancet. 2004;363:675-681.)
  • アダリムマブ(ヒュミラ®)
    PREMIER試験(Arthritis Rheum. 2006;54:26-37.)
  • ゴリムマブ(シンポニー®)
    GO-FORWARD試験(Ann Rheum Dis. 2009;68:789-796.)
  • セルトリズマブ ペゴル(シムジア®)
    RAPID 1試験(Arthritis Rheum. 2008;58:3319-3329.)
  • オゾラリズマブ(ナノゾラ®)
    OHZORA試験(Arthritis Rheumatol. 2022 Nov;74(11):1776-1785.)

Q.どれくらい費用がかかるの?

A.通常用量では薬価は1か月あたり約8万~11万円で、3割負担の場合の自己負担額は約2万5千~3万5千円です。ただし、高額療養費制度や付加給付制度を利用することで、実際の自己負担額はさらに少なくなる場合があります。
現在ではインフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブではバイオシミラーも使用可能です。バイオシミラーは先発品と同等の有効性・安全性が確認されており、薬価は1か月あたり約4万3千~6万7千円です。
3割負担では約1万3千~2万円程度となるため、経済的負担を軽減できることから現在では広く使用されています。
※薬価および自己負担額は2026年8月時点の概算です。

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Q.メトトレキサートと併用したほうがいいの?

A.多くのTNF阻害薬ではMTXと併用した方が、単独投与より高い治療効果が期待できることが知られています(Ann Rheum Dis. 2023;82:3-18.)。
一方、ゴリムマブやオゾラリズマブでは、MTXを使用できない患者さんに対する単独投与でも有効性が示されており、MTXが使用できない場合にも選択肢となります。(Ann Rheum Dis. 2013;72:1488-1495.)(Arthritis Res Ther. 2023 Apr 13;25(1):60.)

IL-6阻害薬

IL-6(インターロイキン6)は、TNFと同じく関節リウマチで炎症を引き起こす代表的なサイトカインの一つです。IL-6は関節の炎症だけでなく、発熱や全身倦怠感、貧血、CRP上昇など全身の炎症反応にも深く関与しています。
IL-6阻害薬は、このIL-6の働きを抑えることで関節の痛みや腫れを改善し、関節破壊の進行を抑制することが確認されています。また、CRPなどの炎症反応が速やかに改善しやすいことや、発熱や全身倦怠感などの全身症状にも高い効果が期待できることが特徴です。
現在トシリズマブとサリルマブの2種類の製剤があります。
トシリズマブには点滴製剤と自己注射製剤があり、サリルマブは自己注射製剤です。患者さんの生活スタイルや通院状況に合わせて投与方法を選択することができます。
また、トシリズマブでは点滴製剤のバイオシミラーがすでに発売されています。さらに、皮下注射製剤のバイオシミラーも近日発売予定(2026年8月現在)であり、今後は治療費のさらなる軽減が期待されています。

薬剤 投与方法 投与間隔
トシリズマブ(アクテムラ®) 点滴・自己注射 点滴:4週ごと
自己注射:2週ごと(必要に応じて週1回)
サリルマブ(ケブザラ®) 自己注射 2週ごと

IL-6阻害薬は比較的安全性の高い薬剤ですが、免疫の働きを調整するため、肺炎や尿路感染症などの感染症には注意が必要です。また、IL-6を抑制することでCRPや発熱が上がりにくくなるため、感染症を起こしていても血液検査で炎症反応が目立たないことがあります。そのため、CRPや発熱のみでは感染症を否定できず、症状や身体所見も含めて総合的に評価することが重要です。
また、好中球減少、肝機能障害、脂質異常症などがみられることがあるため、治療中は定期的に血液検査を行い、安全性を確認しながら治療を進めます。さらに、憩室炎や大腸憩室のある患者さんでは消化管穿孔のリスクが高くなることが報告されているため、慎重に使用します。

Q.どれくらい効果があるの?

A. 下記の臨床試験が行われており、日本では、メトトレキサート(MTX)で十分な治療効果が得られなかった患者さんを対象として、約60~70%の患者さんで一定以上の症状改善(ACR20)が認められており、関節の痛みや腫れを改善するだけでなく、関節破壊の進行を有意に抑制することも報告されています。

  • トシリズマブ(アクテムラ®)
    OPTION試験(Lancet. 2008;371:987-997.)
  • サリルマブ(ケブザラ®)
    MOBILITY試験(Arthritis Rheumatol. 2015;67:1424-1437.)

Q.どれくらい費用がかかるの?

A.通常用量では薬価は1か月あたり約6万5千~9万2千円程度で、3割負担では約2万~2万8千円程度です。ただし、高額療養費制度や付加給付制度を利用することで、実際の自己負担額はさらに少なくなる場合があります。
また、トシリズマブでは点滴製剤のバイオシミラーがすでに発売されています。さらに、皮下注射製剤のバイオシミラーも近日発売予定(2026年8月現在)であり、今後は治療費のさらなる軽減が期待されています。

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Q.どんな人によく使われるの?

A. 炎症に伴う貧血や軽度の肝酵素上昇がある患者さんで有効性が高い可能性が報告されており、薬剤選択の参考にされます。(Arthritis Res Ther. 2017 Aug 11;19(1):185.)
また、MTXを使用できない患者さんでは、TNF阻害薬よりIL-6阻害薬や後述するCTLA-4(アバタセプト)が優先的な治療選択肢とされています。そのため、MTXが使用できない患者さんに対しても使用しやすい生物学的製剤の一つです。

Q.間質性肺炎があっても使えるの?

A.近年では関節リウマチ関連間質性肺炎(RA-ILD)を合併した患者さんでも治療選択肢となる可能性が報告されています(Open Access Rheumatol. 2024;16:127-135.、Clin Exp Rheumatol. 2025;43(3):451-458.)。一方で、現時点では観察研究が中心であり、肺病変の種類や重症度を考慮しながら薬剤を選択することが重要です。

T細胞共刺激調節薬(アバタセプト)

アバタセプト(オレンシア®)は、T細胞が過剰に活性化するのを抑えることで炎症を改善する生物学的製剤です。
関節リウマチでは、自己反応性T細胞が活性化されることで、B細胞やマクロファージが刺激され、TNFやIL-6などの炎症性サイトカインが産生されます。アバタセプトは、T細胞の活性化に必要な「共刺激シグナル(CD80/86-CD28)」を阻害することで、免疫反応を上流から調節し、炎症や関節破壊の進行を抑えます。
現在使用できる薬剤はオレンシアのみですが、点滴製剤・皮下注射製剤どちらもあります。

薬剤 投与方法 投与間隔
アバタセプト(オレンシア®) 点滴・自己注射 点滴:4週ごと
自己注射:週1回

アバタセプトは他の生物学的製剤と比べると効果が現れるまでやや時間がかかる場合があります。しかし、治療を継続することで十分な効果が期待できる薬であり、「ゆっくり、しっかり効く薬」と考えられています。早期に効果が不十分と判断せず、一定期間継続して治療効果を評価することが重要です(Ther Adv Musculoskelet Dis. 2010;2:331-341.)。
また、大規模な観察研究では、TNF阻害薬やIL-6阻害薬(トシリズマブ)と比較して重篤な感染症のリスクが低い可能性が報告されており、安全性の高い生物学的製剤として広く使用されています(Arthritis Care Res (Hoboken). 2020;72:9-17.、Ann Rheum Dis. 2019;78:456-464.)。一方で、研究によって結果は一致しておらず、患者さんの年齢や合併症を考慮して薬剤を選択することが重要です。
アバタセプトは免疫を調節する薬剤であるため、肺炎などの感染症には注意が必要です。また、治療開始前には結核やB型肝炎ウイルス感染の有無を確認し、安全性を十分に評価したうえで治療を開始します。
当院では、高齢の方や間質性肺炎を合併している方、MTXが使用できない方、感染症リスクを考慮したい方などでは、アバタセプトを選択することがあります。

Q.どれくらい効くの?

A.臨床試験では、メトトレキサート(MTX)で十分な治療効果が得られなかった患者さんを対象として、約68%の患者さんで一定以上の症状改善(ACR20)が認められ、関節破壊の進行も有意に抑制されました。

  • アバタセプト(オレンシア®)
    AIM試験(Ann Intern Med. 2006;144:865-876.)

また、ATTEST試験(Ann Rheum Dis. 2008;67:1096-1103.)では、抗TNF阻害薬であるインフリキシマブとほぼ同等の有効性が示され、さらに、抗TNF阻害薬で十分な効果が得られなかった患者さんを対象としたATTAIN試験では、約50%の患者さんで一定以上の症状改善(ACR20)が認められ、TNF阻害薬が無効な患者さんでも有効な治療選択肢となることが示されています(N Engl J Med. 2005;353:1114-1123.)。

Q.どんな患者さんによく使われるの?

A.抗CCP抗体やリウマチ因子が陽性の患者さんでは、アバタセプトの治療効果が高い傾向が報告されています(RMD Open. 2017;3:e000345.Rheumatol Ther. 2021 Jun;8(2):937-953.)。近年では、間質性肺炎を合併した患者さんでも治療選択肢となる可能性が報告されており、IL-6阻害薬とともに重要な治療選択肢の一つとなっています。一方で、現在のエビデンスは観察研究が中心であり、肺病変の種類や重症度を評価したうえで薬剤を選択することが重要です(Biomedicines. 2022;10:1480.、Rheumatology (Oxford). 2020;59:3906-3916.、Autoimmun Rev. 2021;20:102830.)。

Q.どれくらい費用がかかるの?

A.通常用量では薬価は1か月あたり約6万~7万円程度で、3割負担では約2万円前後です。ただし、高額療養費制度や付加給付制度を利用することで、実際の自己負担額はさらに少なくなる場合があります。

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生物学的製剤の使い方

生物学的製剤には点滴製剤と自己注射製剤があります。
自己注射製剤では、ご自宅で患者さん自身が注射できる薬剤も多く、通院回数を減らしながら治療を続けることが可能です。
一方で、生物学的製剤は免疫の働きを調整する薬であるため、肺炎や帯状疱疹などの感染症には注意が必要です。
そのため、治療開始前には胸部レントゲンや血液検査などを行い、治療中も定期的に安全性を確認しながら使用します。

患者さん一人ひとりに合わせて選択します

現在では複数の生物学的製剤が使用できるようになっており、病気の活動性だけでなく、年齢、合併症、妊娠・出産の希望、ライフスタイル、自己注射が可能かどうかなどを総合的に考慮して最適な薬剤を選択します。

JAK阻害薬

JAK(Janus kinase)阻害薬は、細胞の中で炎症の情報を伝えるJAK-STAT経路を阻害する内服薬です。IL-6やインターフェロンなど複数の炎症性サイトカインのシグナルを同時に抑えることで、関節の炎症や痛みを改善し、関節破壊の進行を抑制します。
最大の特徴は、飲み薬でありながら生物学的製剤と同等の高い治療効果が期待できることです。自己注射や点滴を必要とせず、多くの患者さんで寛解(症状がほとんどない状態)を目指すことができます。
一方で、JAK阻害薬は生物学的製剤と比較すると新しい治療薬であり、長期安全性に関するデータが現在も蓄積されている段階です。そのため、国内外のガイドラインでは、多くの場合まず生物学的製剤による治療を検討し、その後JAK阻害薬を選択することが推奨されています。
副作用としては、免疫の働きを調整するため帯状疱疹をはじめとした感染症に注意が必要です。特に帯状疱疹は他の生物学的製剤より多いことが知られており、不活化帯状疱疹ワクチン(シングリックス®)の接種が推奨されています。また、血栓症、心血管イベント、悪性腫瘍についても注意喚起が行われており、治療開始前だけでなく治療中も必要に応じて評価を行います。患者さんによっては、ニューモシスチス肺炎を予防するために予防的な抗菌薬(ST合剤)を併用する場合もあります。
患者さんの年齢や合併症、ライフスタイル、妊娠・出産の希望などを総合的に考慮しながら薬剤を選択することが重要です。当院では、それぞれの患者さんに最適な治療をご提案できるよう、十分にご相談しながら治療方針を決定しています。

Q.JAK阻害薬はどれくらい効くの?

A, 現在5種類のJAK阻害薬が関節リウマチに対して使用できます。下記のそれぞれの第Ⅲ相試験では、いずれのJAK阻害薬も約60〜75%の患者さんで一定以上の効果(ACR20)が確認されました。また複数の試験で関節破壊の進行も有意に抑制されました。

  • トファシチニブ(ゼルヤンツ®)
    ORAL Solo試験(N Engl J Med. 2012;367:495-507.)
  • バリシチニブ(オルミエント®)
    RA-BEAM試験(N Engl J Med. 2017;376:652-662.)
  • ペフィシチニブ(スマイラフ®)
    RAJ3試験(Ann Rheum Dis. 2019;78:1320-1332.)
  • ウパダシチニブ(リンヴォック®)
    SELECT-COMPARE試験(Lancet. 2019;393:459-468.)
  • フィルゴチニブ(ジセレカ®)
    FINCH 1試験(Lancet. 2019;394:2138-2151.)

Q.どれくらいで効いてくるの?

A. JAK阻害薬は効果発現が比較的速いことも特徴です。治療開始後1〜2週間程度で痛みや朝のこわばりの改善を実感される患者さんも少なくなく、症状が強い患者さんや早期の改善を目指したい患者さんでは有力な治療選択肢となります。(Rheumatology and Therapy. 2019;6(Suppl 2):S35-S49., Biomedicines. 2025 Oct 5;13(10):2429.,)

Q.どれくらい医療費がかかるの?

A. 通常用量では薬価は1か月あたり約11万~15万円程度で、3割負担では約3万~4万5千円程度となります。
ただし、高額療養費制度や付加給付制度を利用することで、実際の自己負担額はさらに少なくなる場合があります。
※2026年8月時点の薬価を30日分で計算した概算です。診察料や検査料、調剤料などは含みません。

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Q.5種類もあるけどどう違うの?

A. JAKにはJAK1・JAK2・JAK3・TYK2の4種類があり、それぞれ異なるサイトカインのシグナル伝達に関与しています。JAK阻害薬は薬剤ごとに、どのJAKをより強く阻害するかが異なっており、実際の診療でも患者さんの病状や合併症に応じた薬剤選択の参考となります。また、薬剤ごとに肝臓での代謝や腎臓からの排泄の割合が異なるため、肝機能や腎機能も薬剤選択や投与量を考える際の参考となります。

JAK-STAT経路とサイトカインの関係 各JAK阻害薬のJAK阻害プロファイルと腎代謝率・腎機能が悪い患者での投与量

Q.どんな患者さんに使うの?

A. MTXを使用できない患者さんや、生物製剤が効果不十分だった患者さんなどでも検討されます。
JAK阻害薬はMTXを使用できない患者さんでも単独療法で高い有効性が確認されており、日本関節リウマチ診療ガイドライン2024でも重要な治療選択肢の一つとして位置付けられています。
生物学的製剤で十分な効果が得られなかった患者さんでも、約40〜65%で効果が認められたことが報告されています。(Lancet. 2013;381:451-460.、N Engl J Med. 2016;374:1243-1252.、Lancet. 2018;391:2513-2524.)。
他にも、JAK阻害薬は疼痛改善にも優れている可能性が報告されており、痛みが強い患者さんでは、治療選択肢の一つとして検討されることがあります。(Arthritis Rheumatol. 2025 Mar;77(3):253-262.)
また、一部のJAK阻害薬は関節リウマチだけでなく、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、潰瘍性大腸炎、クローン病などにも保険適応があり、これらの疾患を合併した患者さんでは一つの薬剤で複数の病気を治療できる場合があります。

JAK阻害薬のRA以外の適応疾患

近年では、間質性肺炎(RA-ILD)を合併した患者さんでも安全に使用できる可能性が報告されており、こちらに関しても今後の情報の蓄積が期待されています。(BMC Rheumatol. 2024 Jan 26;8:4, Autoimmun Rev. 2024 Oct;23(10):103636.)

Q.朝か夕どちらで飲むほうがいいの?

A. 基本的には、決められた用法を守り、毎日忘れずに内服できる時間帯を選ぶことが重要です。
一方で炎症性サイトカインには日内変動があることが知られており、JAK阻害薬の一つであるバリシチニブ(オルミエント®)では朝ではなく夕方に内服した方が有効性が高い可能性を示した報告もあります。まだ研究段階ではありますが、今後の発展が期待される興味深い知見です。(Arthritis Res Ther. 2025 Apr 17;27(1):91.)

まとめ

このようにたくさんの薬剤の開発により、近年のリウマチ診療は非常に質が高いものとなり、低疾患活動性や寛解といったほとんど症状がない患者さんの割合も年々増えています。
一方でそれでも関節リウマチを完治させる薬剤はなく、患者さんは長年にわたって病気と付き合っていかなければなりません。
治療薬にはそれぞれメリット・デメリットがあり、年齢や合併症、妊娠・出産の希望、仕事や生活スタイルなどによって最適な治療は異なります。そのため、患者さんと医療者が十分に話し合い、お互いに納得したうえで治療方針を決めていくこと(Shared Decision Making:SDM)が重要とされています。
「どの薬が一番良いか」ではなく、「その患者さんにとって最も適した治療は何か」を一緒に考えながら治療を進めていくことが、現在の関節リウマチ診療で大切な考え方です。